みおこし

モーリスのみおこしのレビュー・感想・評価

モーリス(1987年製作の映画)
4.1
ジェームズ・アイヴォリーの名作が4Kで劇場公開されると聴いて、初めて鑑賞しました。英国紳士俳優の先駆けであるヒュー・グラント目当てだったものの、モーリス役のジェームズ・ウィルビーにすっかり一目惚れ。

20世紀初頭のイギリス。ケンブリッジ大学に通う青年モーリスとクライヴは意気投合し仲良くなるが、次第に互いへの想いは恋愛感情へと変わってゆく。同性愛が重罪とされていた時代、自らの想いを胸に秘めようと試行錯誤する二人の関係にも軋轢が生じ始め...。

イギリスの文芸作品を映画化した作品にはかなりヨワいのですが、今回も大号泣(笑)。男性同士の恋愛を描いた本作、かなりお気に入りの恋愛映画になりました。
本作で一世風靡したヒュー・グラントとジェームス・ウィルビー、とにかく彫刻のように美しい二人のラブシーンはため息が出るほど美しかったです。
死ぬほど愛しているのに、人前で指一本触れることさえできない、二人きりの時間もほとんど作れない。そして何が辛いって、二人が結ばれる運命はこの時代にはあり得ないということ。観ながら何度も「生まれる時代が違ったら...」と胸が締め付けられる思いになりました。
ベン・キングズレー扮する医師がモーリスに「英国という国は人間の本質を否定し続けてきた」と語るシーンがあるのですが、ザ・階級社会の当時の英国においては同性愛=大罪、狂気としてみなされ、もしそれが明るみになったら社会的な地位は剥奪。
誰かを愛する気持ちを押し殺し、自分は病気だと思い込まざるを得ないモーリスの葛藤は想像を絶します。

素直に自分の想いを貫き続けるモーリスに対し、クライヴが選んだ生き方はなんて残酷なんだろうと思いつつも、時代の背景を考えるとそれもまた仕方ないのかなと。
でもあのラストシーン、窓の向こうを見つめる彼の心中を察すると言葉に詰まります...。

危険な魅力の猟場番のアレック役のルパート・グレイヴスも素晴らしかったですが、賢いが素直になりきれないクライヴ役のヒュー様と、とにかく純粋で脆いモーリス役のウィルビー様の演技が圧巻。ただ美しいだけでなく、青年から大人の男性へと成長する過程で見せる心の変化の表現も見事でした。
やるせないこの恋の物語ですが、監督のジェームズ・アイヴォリーとプロデューサーのイスマイル・マーチャントが実際に同性愛者であるからこそ、より真に迫った作品になったのかなと。『君の名前で僕を呼んで』も同じく同性愛をテーマにしたアイヴォリーの最新作とのこと、かなり本作がハマったので早く観なければ!
透き通るような純粋なラブストーリー、そして古き良き英国の貴族社会の雰囲気がお好きな方は必見です!
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