柊渚

バティニョールおじさんの柊渚のレビュー・感想・評価

バティニョールおじさん(2002年製作の映画)
4.5
ナチス占領下時代のフランスでユダヤ人の少年をかくまうことになったバティニョールおじさんの優しく心温まる奮闘記。


バティニョールおじさんは家族とパリで精肉屋を営む平凡なおじさん。周囲に流されるがままに生きてきたおじさんが、成り行きと罪悪感から仕方なくユダヤ人の少年シモンをかくまうことになるのですが…

仕方がないから食事を持ってきてあげる。
仕方がないからシラミだらけの髪を洗ってあげる。
仕方なく仕方なく…
仕方なくの行為のはずだった。
しかしシモンの境遇などを知っていくうちにいつしかシモンを守ることが彼の信念に変わり始める。

そして苦悩した末、シモンとシモンの従姉妹であるユダヤ人少女2人と共にスイスへの逃亡を決意するのですが、「子どもを厄介払いしたいのか?そこまでする価値があるのか?」と問いかける仲介人に、「俺は救いたいんだよ」ときっぱり答えるおじさんがかっこよかった。罪悪感だけじゃこんな命懸けの選択はできないと思う。あの時代であれば尚更。おじさんの心の強さが表れていました。

でもこのフランスからスイスへの逃避行が本当の意味での困難の連続のため心臓に悪くなるような展開ばかりでハラハラ…(;▽;)


ほのぼのパッケージに惹かれて衝動借りしちゃいましたが、第二次世界大戦やホロコーストといったように時代背景や扱っている題材は暗く重たいもの。だけどおじさんと子どもたちのやり取りが面白くてとっても微笑ましい…!!映画全体も悲壮感に満ちたものではなく明るい雰囲気に包まれている。戦争による直接的な残酷描写もないけれども、子どもたちの何気ない言葉の節々に暗い影を感じてハッとさせられました。

歴史に名前が残ることはないんだろうけど、
子どもたちにとっておじさんは紛れもないヒーロー。

ユダヤ人という境遇から聡明で憂いを浮かべた瞳が印象的なシモンもやっぱりまだまだ子どもで可愛いし、結局すごくお人好しなおじさんの不器用さも愛おしい。好きだ!
締めくくりも素敵でした(*ノД`*)!
柊渚

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