青眼の白龍

悪魔のいけにえ/レジェンド・オブ・レザーフェイスの青眼の白龍のネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

『悪魔のいけにえ』旧シリーズの最終作。監督は一作目の共同脚本を担当したキム・ヘンケル。主演はレニー・ゼルウィガー、ソーヤー家の長男役でマシュー・マコノヒーが出演している。旧作の正当な続編であるが、設定や物語に前作との繋がりはない。ストーリー展開は一作目を踏襲しているものの話にまとまりがなく、緊迫感に欠けた二番煎じの印象は拭えない。全体的に画面が暗くて観辛いし、レザーフェイスの活躍も中途半端。背後に政府の存在を匂わせる等、独自の解釈を盛り込むも、説得力の無い陰謀論のせいで一家の異常性を損ねてしまった。 
『悪魔のいけにえ』という作品の持ち味は「社会から隔絶された田舎町で、キリスト教的倫理を拒絶し、文明化に迎合することなく殺戮の風習を続ける一家」という、閉鎖された共同体に遭遇した恐怖をドキュメンタリー的手法で客観的に見せつけた点であろう。アマゾンの人喰い族のようなオリエンタリズム的ホラーを南部――テキサスに移すことで、エド・ゲインのように現代においても実在し得る恐怖であることを、観客に再認識させるのだ。
 それは高度に文明化された我々にとって「意味無き暴力」に過ぎず、その野性を理解し得ないという合理主義的視点の限界が恐怖の根源となっていることに留意しなければならない。しかし、本作で提示された陰謀論によって、一家の背後に政府(文明の象徴)の存在を暗示したことにより、彼らの殺戮に意味が介在してしまう結果となった。これでは「アマゾンの人喰い族がホワイトハウスから金を受け取って観光客を襲っている」というのと、何ら変わりがない。
 既に事態は我々の理解の範疇にあり、リアリティが損なわれるのと同時に、ホラー映画ではなくサスペンス映画に成り果ててしまうのだ。『CUBE』にしてもそうだが、政府を引き合いに出した陰謀論は不条理ホラーの続編に好んで用いられる題材である反面、非常に相性が悪いことを理解しておかなければならない。
 本作に関して言えば、主人公の人物設定(義父に性的虐待を受けており内向的な性格)やご都合主義的な結末、上でも述べた画面の暗さ、前半三十分の退屈さ等、批判を挙げるとキリが無い。長所といえばマコノヒーの無駄にハイテンションな演技とマリリン・バーンズ達一作目キャストの特別出演くらいではないだろうか。
 出演俳優の豪華さにも関わらず2014年時点ではシリーズで唯一DVD化されていない本作であるが、近年の『悪魔のいけにえ』リメイク&新作ブームを経ても未だにDVD発売の気配が見えない。恐らく今後も再販される可能性が低いので、悪魔のいけにえマニアの方は今のうちにVHSを入手するようお勧めする。

(鑑賞メーターより転載)