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アリスのKUBOのレビュー・感想・評価

アリス(1988年製作の映画)
3.0
不思議な映画を見た。「不思議の国のアリス」の古い映画化作品のひとつ、くらいなつもりで見たのだが、思いがけない珍品だった。

1988年作品というのだから、それほど古いわけではない。にもかかわらず、ほとんどがストップモーションによる人形アニメ。しかも、その手の作品がどれだけ自然に動くかを競っている中で、あえてギクシャク大雑把に動く。私は制作年代を確認するまで「月世界旅行」みたいな特撮創世記の作品かと思った。だから、この拙さは狙って作った拙さなんだよね。

「アリス」といえばディズニーのものがイメージの中核にあるのが普通だと思うんだけど、「不思議の国のアリス」にインスパイアされて作られた本作は、かなり「気持ち悪い」。冒頭に「子ども向け」とことわっているが、子どもが見たら怖がるんじゃないかな? 目をひん剥いて物を投げてくる白うさぎ。(白うさぎは何故かアリスが声をかけるとムキになって怒り出す) アリスの人形化した状態も、怖いと言ったら怖い。様々な動物の骨や身体を継ぎ足して作られたような兵隊(?)たちは、「トイストーリー」のシドのオモチャたちが襲ってくるような様相。開けた缶の中から無数のゴキブリが這い出してくるあたりでは、さながら恐怖映画のようだ。

「気持ち悪い」アリスといえば、最近のティム・バートン版があるけれど、どこか調和のとれたティム・バートン版に比しても、意図の良くわからないバラバラな気持ち悪さでは、こちらの方に軍配をあげる。

あえて先端技術を使わずに、手づくり感満載で摩訶不思議な世界を作り上げる。そういった作品に関心のある方はどうぞご覧下さい。ただ私的には、25分くらいの短編なら「すごい作家性だ」と言って狂喜していたかもしれないけど、これを88分見せられると、もうお腹いっぱいでした。

(ちょっとおもしろかったのは、本作ではアリスは「机の抽斗」から不思議の国へ入り込む。この辺は、まるで「ドラえもん」だ。作者の趣味かな?)
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