3110136

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンの3110136のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ファザコンこじらせ系天才詐欺師フランク。


カール「君はどうやったんだ?ルイジアナの司法試験だよ」
フランク「カンニングじゃない、2週間勉強したら合格した」


実話をベースにしたスピルバーグ監督による《キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン》。ちなみに「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」は鬼ごっこのときの掛け声だそうです。「捕まえられるもんなら捕まえてみろ」、タイトルも最高だと思います!フランクは犯罪者(それ自体はいけないこと)ですが、あくまでその是非を問うのではなく、カールとの《追いかけっこ》が中心にある、それが伝わってくるナイスタイトルですね♪
(パイロットとか医者とか実務に携わったとすると、かなり怖いですけども)
安定のスピルバーグクオリティで安心して見ていられます。


《事実は小説より奇なり》、実際にこんなことがあったとは!と驚きの内容。
ちなみに、wikiによると、カール(捜査官)という人物は実在せず、フランクを追いかけた複数の捜査官をもとにした創作だそうです。


●あらすじ
両親の離婚をきっかけに家を飛び出したフランク(レオナルド・ディカプリオ)。しかし、手元には父から誕生日にもらった小切手しか無かった。しかも、その小切手も思うように現金化することができず、自らの無力さを感じるフランク。そんなフランクはパンナム航空のパイロットが社会的な信用があることを知り操縦士になりすますことに。身分証を偽造し、制服を手に入れると面白いように誰からも疑われない。小切手詐欺の件数とともに、その技術も進化していった。

そして、件数が増えれば、当然詐欺に気づく人も増える。FBI本部ではカール(トム・ハンクス)を中心として対策本部が動き出していた。程なくして、カールはフランクが滞在している部屋へ侵入することになる。鉢合わせする二人、銃を向けるカールを前にしてフランクは冷静だった。「遅いんだよ、奴は窓から逃げた。僕は秘密検察局(シークレットサービス)のバリー・アレンだ。FBIだけが奴を追っていると思ったのか?」カールを煙に巻き、難を逃れたフランク。その頭の回転の速さがフランクの武器の一つだった。

その後もフランクは小切手詐欺を続けていた。お金に不自由することはなく、贅沢な生活を送る。しかし、偽りの人生、本当のフランクを知る人間はいない。孤独感からかあるクリスマス・イブの日、フランクはカールに電話をした。「この前は騙してすまなかった」「謝りの電話じゃないだろ?君は話し相手がいないんだ!」一度の会話でフランクの心理を見抜くカール。皮肉にも、本当のフランクを知るのは捜査官のカールだけだったのだ。奇妙な関係の二人。毎年のクリスマス・イブにカールに電話をかけるのがフランクの恒例となった。

その後も、パイロット、小児科医、弁護士と身分を偽りフランクは世間を渡り歩く。

そして遂にカールはフランクを追い詰める。フランスで再び二人は対峙する。「君を逮捕する、外は20名の警官が包囲している」「いや、嘘だ、僕を騙そうったってそうはいかない、逃げるぞ」「嘘じゃない、私に手錠をかけさせてくれれば悪いようにはしない」「嘘だ、嘘をつきつづければいい、そのうち本当になる」外に出ようとするフランク「やめろ!殺されるぞ」「本当か?」「本当だ」手錠をフランクに渡すカール。ついにカールは観念した。そして12年の禁固刑がフランクに言い渡される。

あるクリスマスの日、カールはフランクの面会に訪れていた。「やあ元気か」「小切手詐欺に振り回されている」「小切手はあるか?」小切手を見るフランク「銀行係だ、日付のスタンプでわかる」フランクの小切手詐欺に関する知識を改めて感じたカールはそこから4年かけて周囲を説得し、FBIの金融犯罪課で自分の部下としてフランクを働かせることにしたのだ。

―――――
実際にあった話とは驚きますね。

この《Based on a true story》系の話で好きなのは、大抵最後に流れる《その後》です。

「中西部で平和に暮らしながら FBIに協力して国際手配を受けた悪質な偽造犯の逮捕に貢献 銀行詐欺と偽造の摘発の権威とされている」
「偽造防止小切手を考案 銀行や大企業が毎日使用しており 代価として年間数百万ドルをフランクに支払っている」
「フランクとカールは今も仲の良い友達である」

甥っ子の話を聞くような「あ〜、あのフランクがね〜」みたいな不思議な気分になります(*^^*)

この映画で面白かったのは、
・フランクとカールの関係
・フランクの頭の良さ
です。


まずは、
●フランクとカールの関係
犯罪者とそれを追う立場でありながら、どこか《二人だけの信頼関係》のようなものが感じられて、うまく言葉にできませんが、そこが良かったです。《嘘をつき続けたフランク》と《クソ真面目なカール》。お互いのない部分に惹かれ合ったのかもしれません。

冒頭にも書いたとおり、実際にはカールという人物は存在しないそうで、創作だということなんですが、この二人の掛け合いがこの映画の魅力だと思います。カール役がトム・ハンクスというのもとてもピッタリでしたね。

印象的なシーンはいくつもありますが、フランスで遂にフランクが逮捕されるシーン「フランス警察に包囲されている、出ていったら殺されるぞ」というカールに対して「嘘だ」と言いつつも、最終的にはカールを信じるフランク。いざ外に出てみると誰もいない。「嘘がうまいね」とカールにいうフランクがどこか嬉しそう。(実際は間髪入れず警察に取り囲まれ、カールは嘘は付いていません。)きっとフランクはカールが自分と同じ土俵(嘘つき)にのったのが嬉しかったんじゃないかなと思いました。フランクは身分を偽り小切手を偽造し、ひたすら嘘をつき続けているわけで、ある意味本当の自分を知っているのは自分を逮捕しようとしているカールだけ、という皮肉。そんなカールにフランクはある種の信頼を感じていたんじゃないかな。そんなカールが自分と同じように《嘘を付いた》ことが嬉しかったんじゃないかと、自分と同じ人種になったことが。

クリスマス・イブの電話でも「謝りの電話じゃないだろ?君は話し相手がいないんだ!」というカールのセリフがフランクの孤独を表していました。そんなフランクの孤独もカールは理解していた。

「なぜ逃げるんだ?お前には嘘の暮らしの方が楽か?」

FBIでの生活に不安を感じ、再び逃亡しようとしたフランクにカールがかけた言葉。二人の信頼関係が感じられます。もはや父親のよう。物語を通じて、フランクと実の父親の会話も出てきます。フランクは父親の事が大好きだったんでしょうね。そんな実の父にカールを重ねていたのかもしれません。


そして、
●フランクの頭の良さ
冒頭にもかきましたがふらんくは天才なんですね。アメリカの司法試験の難易度は分かりませんが、きっと簡単ではないでしょう。

物語の随所にフランクの頭の良さが出てきます。

・転校初日、代理の先生になりすましクラスの生徒を騙した
(その後、両親が呼び出された時に、フランクと父が目を合わせて笑うシーンが好きです)
・カールと鉢合わせした時、シークレットサービスを名乗った
(これ、バリー・アレンってどんなレベルの漫画家なんでしょうか?日本で言うところの鳥山明とか?手塚治虫?)
・ルイジアナ州の司法試験に合格

偽造の天性もさることながら、この瞬時に状況を把握し、最適の振る舞いができる頭の回転の良さを兼ね備えた天才だったわけです。物語の絵描き方が、観ている側にも「あなただったらどう立ち振る舞う?」と問いかけてくる感じなのもフランクの頭の良さを際立たせていました。


●その他
音楽も良かった。古き良きスパイ映画のイメージ(完全に私の主観です)。オープニングのアニメーションもそれとマッチしていました。
3110136

3110136