豚肉丸

ゴッド・ブレス・アメリカの豚肉丸のレビュー・感想・評価

ゴッド・ブレス・アメリカ(2011年製作の映画)
4.5
何もかもを失って「無敵の人」と化した男の前に、同じく「無敵の人」と化した少女が現れ、2人で気に入らない奴を殺し回る旅に出るお話

アメリカ社会とマスメディアと若者のインターネットを露悪的に皮肉たっぷりに描き、これら全てを銃で撃ちまくる展開はさぞ爽快か、と思ったがそんなことはない。人生の全てを失い、最早失うものなど何も無い状態の「無敵の人」と化しても、やはり現実は着いてくる。「気に入らない奴らを殺す!」という爽快なテーマの裏には、徹底した現実への無常観が込められていてなかなか面白かった。この映画から12年経った今は、この映画よりももっと悪い状況に陥っており、「無敵の人」は増え続けていますが...

映画内で印象的なアイコンとして登場するスティーヴンというキャラクターが面白い。彼はアメリカで大人気のオーディション番組に出演するも、あまりにも歌が下手すぎて面白おかしく加工されたネットミームになってしまう。このスティーヴンの存在もまた、主人公を無敵の人にした要因なのだが...その彼の使い方がかなり良い。

「気に入らない奴らを殺す!」という行動には必ず独善性が内包されている。社会一般上では悪と認定される行動をとっている人達を殺す本作に爽快さがあまり感じられないのは、その内包された独善性を誤魔化さずに描いているからなのかなと思った。
豚肉丸

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