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にごりえのstanleyk2001のレビュー・感想・評価

にごりえ(1953年製作の映画)
3.8
「にごりえ」(1953)

文学座と独立プロ新世紀映画の提携作品。文学座オールスターキャスト。北村和夫さんが若い。岸田今日子さん神山繁さんはクレジットもない。

映画は3つの話のオムニバス。「十三夜」「大つごもり」「にごりえ」どれも一葉さんが亡くなる前の一年間に書かれた。

「十三夜」は不幸な結婚をした妻が幼馴染と偶然に出会う話。輝いていた子供時代。女の子は高級官吏の妻にはなったが夫のDVに苦しんでいる。男の子は成長し身を持ち崩し父から受け継いだ店を失い妻子とも別れて車夫に落ちぶれている。「スタンドバイミー」みたいなほろ苦い話。背景が舞台の書割風。第三話に美術予算を集中させたためかな?

「大つごもり」はちょっとサスペンス。病気の叔父のために雇い主の金を盗んだ女中の運命。香川京子さんが美しい。仲谷昇さんが放蕩息子の色気を放つ。「カノッサの屈辱」の頃はロマンスグレーのイメージだったが若い頃は危ない魅力があったのだ。

「にごりえ」は銘酒屋の人気の酌婦・勝気なお力(淡島千景さんの艶っぽさ!)の物語。今でいうキャバレーのホステスの物語。大人の愛憎。力にはお互い深く愛し合う馴染み客、源七(宮口精二)がいた。源七は仕事が左前になりお力のいる店に通うことが出来なくなった。来れなくなった源七に会いたい気持ちは募る。しかし酌婦を生業にしている以上は嫌な客の相手もしなくてはならない。そして何より辛いのは源七には妻(杉村春子)と子供がある事。さて二人の愛の行方は?深くため息つくしかない結末。第三話は夜の場面が多く光と影を使いこなした画面が素晴らしい(撮影・中尾駿一郎)

冒頭とそれぞれの話の初めに一葉の日記が挿入される。一葉の擬古文調の文章が心地良い。(監修・久保田万太郎)

さすがキネ旬ベストワン。深く沁み入りました。また原作を読み直したくなった。
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