ShojiIkura

フィラデルフィアのShojiIkuraのレビュー・感想・評価

フィラデルフィア(1993年製作の映画)
3.7
 名作であることは知っていたが、内容について何も知らないまま鑑賞したので、最初の方のアザの話しや、検査をする際の肛門からの内視鏡を拒むところなど、頭の中に?がいくつも並ぶ状態だったが、エイズ感染という事実がいきなりそれらの伏線を回収する。アメリカ人大好きな法廷劇だが、弁護士が弁護士を弁護する、というのは少しひねったところか。死へと向かうアンドリューが裁判で得ようとしたのは賠償金などではなく、有能だった自分を無能を理由に解雇されたことで傷ついたプライドを取り戻すためだったのだろう。死に近づくほど、彼の意識は哲学的になっていく。ジョーの目には、現人神のようにうつったのではないか?オペラと共に表現される終盤のこのシーンは、二人の役者の力量と演出を際立たせる。
 ところで何故タイトルが「フィラデルフィア」という地名(確かに物語の舞台ではあるが〉なのかとWikipediaで調べたら、フィラデルフィアはギリシャ語で「兄弟愛」だというのと、ここが最初米国の首都だったから、とのこと。また、まるで実話をなぞったような物語、と思ったら、実際よく似た出来事があって、すでに亡くなった弁護士の遺族が映画のプロデューサーの取材を受けたと訴えたが、映画製作者側は認めず訴訟になったが、その後示談となった(おそらくお金で解決した)そうで、法廷劇の映画が起訴されるというのも皮肉だと思った。
 それにしてもまだまだヘイトという言葉がはびこる現代…、私達は公平な目でそれぞれが判断する事が求められるのだと思う。
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