コマミー

ギルバート・グレイプのコマミーのレビュー・感想・評価

ギルバート・グレイプ(1993年製作の映画)
3.9
【ギルバートを蝕むもの】



"Filmarks"さんの"90年代映画"の特集上映「Filmarks90's」にて上映された90年代の名作映画を巡る旅…前回の「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」に続き、第2弾。


第2弾は、"レオナルド・ディカプリオ"の出世作であり、"ジョニー・デップ"と"兄弟役"で出演した、スウェーデンの名匠"ラッセ・ハルストレム"のハリウッドでの名作「ギルバート・グレイプ」である。
"アニー"役を演じた当時19歳のディカプリオは、本作で"アカデミー賞助演男優賞"にノミネートされた。まさに世界中に、ディカプリオの名を知らしめた一作の一つである。ジョニー・デップや"ジュリエット・ルイス"と言った当時名の知れた若手俳優の演技も目覚ましく、同時に"アメリカの社会問題"にも物語の中に其処彼処に詰められており、今でも名作として語り継がれている。

本作は、「ベン・イズ・バック」などで現在は映画監督としても活躍している"ピーター・ヘッジズ"の同名小説の映画化だ。勿論これが、脚本家としてだが、本格的な映画界の進出作だ。
知的障害を持つアニーと夫の自殺のショックで家事も出来ないほど"肥満体型"になってしまった母親、そして"2人の姉妹(エイミーとエレン)"と共に暮らす"ギルバート"。弟や母親の"面倒"に明け暮れ、"24年間もこの小さな町から出た事ない"。そんなある日、トレーラーで祖母と共に旅をしていた"ベッキー"と出会い、人生を見つめ直す。

初めて鑑賞した時は何気なく観ていたが、よくよく考えたら"ヤングケアラー"の青年が自分の人生を見つめ直すお話だったのだ。私は別に、父母共に健全な家庭で生まれたのだが、最近テレビのドキュメンタリーでも日本のヤングケアラー問題について触れる事が多いのをよく目にするので、改めて観ると感慨深いなと感じた。私の大好きな作品の一つであるコゴナダの監督作「コロンバス」でも、ヤングケアラーが題材のお話でもあったので好きになれた要因でもあると感じた。
そんな"自分ではどうしようも出来ない状況にある人間"が、運命的な出会いによって人生を見つめ直す物語だなんて、辛いものもあるが素敵な物語であるなと深く感じた。

ギルバートの弟アニーとの交流も、一件微笑ましそうに見えて、ギルバートの目には周りには目立たない"苦痛"が見えてくる。現に、ラストでの"母親の死"のその後、向かってきたベッキーの乗る車にアニーも同席して、ギルバートは家族と"離れ離れの生活"をする。
ただアニーはこれからの人生も共にするので、これが"ハッピーエンドなのかは定かではない"と思うのだ。"その後のギルバートの歩み"は、観客の考えに委ねているのだ。
父親…母親とギルバートを苦しめてた存在から解放されながらも、その後も苦しみの旅は続いてゆく…ここまで考えさせられる作品は凄い。

是非これは、日本人にも多く観てほしい作品だ。ギルバートの経験を重ねてヤングケアラーの事を考えるキッカケになるし、ディカプリオや役者達の演技も素晴らしい。

1週間限定であるので、お早めに。
コマミー

コマミー