すずり

ギルバート・グレイプのすずりのネタバレレビュー・内容・結末

ギルバート・グレイプ(1993年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

【概略】
米国の田舎町で暮らすギルバートは、五人兄弟の次男。
長男は既に町を出て行ってしまっており、過食症の母親や知的障害を抱える弟のアーニーのために、ギルバートは己を犠牲にして生きていた。
感情を押し殺して毎日を過ごす彼だったが、ある日彼の住む町にトレーラーで旅をする少女ベッキーが滞在することになり、ギルバートは彼女との交流の中で自身の境遇について考えることとなる。

・・・

【講評】
今まで観た映画の中で"ぶっちぎりで"閉塞感があった。
田舎町特有のコミュニティの狭さや、家族という鎖がギルバートを何重にも縛り付け、いつしか心を押し殺す術を覚えてしまった彼の姿は、観ていて本っっっっ当に息が詰まる。

それ故に、自由に生きる事を体現したようなベッキーとの交流や、最後に家を燃やすことでしがらみから(完全ではないものの)解き放たれるシーンでは、大きなカタルシスを感じることができる。

また、日本ではある種のタブーのようになっている知的障害児を真っ正面から映し出して、その家族に焦点を当てている点に意義があるのではないだろうか。
いかに取り繕うとも現実にそういった問題が存在する限り、ただ遠ざけるのではなく、真摯に物語を通じて民衆に広く知ってもらうことこそが必要であると思う。
そして、これは弟のアーニーを演じたディカプリオの演技があってこそだ。
彼の顔を知っているにも関わらず、実際にこういう児がいるのではないかと思わせるほど真に迫った、非常に見事な演技だった。
逆に言えば、彼のように巧みに演じられる俳優を起用できなければ、知的障害のような難しい題材を用いるべきではない。

家族という概念について、深く考えられる作品。

【総括】
知的障害児のいる家族に焦点を当てつつ、それらのしがらみと心の中で闘う一人の青年を描いた作品。
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