ボブおじさん

マジェスティックのボブおじさんのレビュー・感想・評価

マジェスティック(2001年製作の映画)
4.1
「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」とスティーヴン・キング原作の作品をいずれも高いクオリティーで映画化したフランク・ダラボン監督が、戦後ハリウッドの〝赤狩り〟の時代を背景に、映画を愛するひとりの男が、本当の自分に出会うまでの姿を描く。

思い返せばダラボンの映画からは〝映画への愛〟が滲み出ていた。「ショーシャンクの空に」では、受刑者たちがリタ・ヘイワース主演の映画「ギルダ」(1946年)を観て、しばしの間、厳しい現実を忘れる。主人公の脱出を助けたのも1枚の映画ポスターだ。

「グリーンマイル」の冒頭、老人介護施設で年老いた主人公(トム・ハンクス)がテレビを見て涙を流す。テレビでは映画「トップ・ハット」(1935年)を放送していた。この映画は、主人公が経験したある奇跡の記憶を呼び戻す役割を果たしている。

そして本作では、その〝映画への愛〟が更に全面に映し出されている。

1951年、ある町の海岸にひとりの男が打ち上げられる。その姿を見て、驚き、狂喜する人々。しかし、男は自分が誰かも分からなかった。

主演のジム・キャリーが、ゴールデングローブ賞を受賞した「トゥルーマン・ショー」(1998)、「マン・オン・ザ・ムーン」(1999)に続き、得意の笑いを封印して、人との触れ合いの中で徐々に変化していく男の姿を繊細に演じている。

記憶のないまま、戦死した町の英雄ルークとして生きる道を歩み始めたピーターは、古い映画館マジェステックの再建に乗り出す。それをきっかけに町も戦前の輝きを取り戻していくのだが……。

主人公のピーターがどんな人物かを冒頭の1分で知らしめる手際の良さよ😊
彼は心血注いだ自分の脚本が、ズタボロにいじくり回されても、何も言えない男だった。

記憶を失い流れ着いた町ローソンで、戦死した若者ルークとして生きるピーターは、いつしか、会ったこともないルークと一体化していく。聴聞会での演説は、事なかれ主義だったかつての彼からは想像ができないものだった。

〝民主主義の理想〟を力強く宣言した彼は、自分の意思で自分の道を歩いていく。

さすが天才ダラボン。これでいいのだ😄



〈余談ですが〉
映画の中でルークの父親が、戦争で皆んなが映画を見にこなくなったことを嘆きます。

〝テレビみたいな小さな箱を見て何が面白いんだ〟と、その後、映画と映画館の魅力について訥々と話す台詞は、ダラボンが観客に向けたメッセージのようにも感じました。

確かにあんな洒落た映画館が町にあれば見に行きたくなると思います😊