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山の郵便配達のmaiのレビュー・感想・評価

山の郵便配達(1999年製作の映画)
3.9
「味わい深い」って言葉がここまで深くしみるような作品はなかなか出会えないと思います。

郵便配達を引退する父親とそれを引き継ぐ息子。そして、そんな2人を見送る母親。
山の郵便配達員として働いてきた父親には、郵便配達をする上での心得があり、息子には息子の意地があります。そして、なかなか家に帰ってこれなくて母親と二人で生活することが多かったため、二人の間にはよそよそしさにも似た隔たりがあったんです…でもだんだんと父親の郵便配達員としての仕事を観ていると、父親への尊敬の念が湧いてくるんです。
本当に自然に湧いてくるんです。
盲目の高齢の女性へのやさしさ、初めに行った山村の人々が惜しんでくれること、風に飛ばされた手紙を追いかける姿。
きっと息子にとっては家になかなか滞在できない、父親との思い出も少ない幼少期だったんだと思います。普通の家庭のような「父と息子の信頼関係」がちゃんとは築けていなかったんです。だからこそ、母親に寂しい思いをさせていた父親に対して息子は少し不満を持っていました。
その心境が、道中で出会った女性への考えや思いに現れています。
寂しい思いをさせたくない、故郷を恋しく思い続けるような人生を送ってほしくない。なんだか、そこまでは「若者」感の強かった息子に対して「父親に似た素朴な人柄」なんだなと印象が変わったシーンでもありました。
そして、この映画の印象的なシーンのひとつが父親を背負うシーンではないでしょうか…!
ここ凄く感動しました。
それまでは、父親の郵便配達員としての姿に到底及ばないなと思っていたのですが、そのタイミングで初めて息子の成長を感じられました。
そして、父親の中に息子への信頼が生まれるんです。
任せても大丈夫かもしれない、という。

凄く素朴で、ひたすら郵便配達員としての道中を描くのですが、田舎道の美しさと中国の素朴さとが相まって、懐かしい雰囲気かつ父と息子の関係性の変化が本当に心に響きます。

心が洗われるような映画でした。
ストーリーも景色も美しかったです。
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