masahitotenma

山の郵便配達のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

山の郵便配達(1999年製作の映画)
3.3
彭見明(ポン・ジェンミン)による同名の短編小説を霍建起(フォ・ジェンチイ)監督が映画化。
原題: 那山、那人、那狗(意味: あの山、あの人、あの犬)
(1999、1時間33分)

1980年代初めの中国湖南省西部の山岳地帯。
長年郵便配達を勤めた父は膝を患い、仕事を息子に引き継ぐことに。
1日40キロの山道を3日間かけて郵便物を集配する過酷な仕事だが、息子一人で行くはずが、父の道中の相棒で道案内してくれる「次男坊」(シェパード犬)が付いて行こうとしなかったため、父親も今回だけ同行することにする…。

~登場人物~
・父親、滕汝駿(トン・ルゥジュン)
・息子、劉燁(リィウ・イェ):24歳
・母親、趙秀麗(ヂャオ・シゥリー):元は山の民。
・五婆、龔業珩(ゴン・イェハン):孫の手紙を楽しみに待つ盲目の老婆。
・トン族の娘、陳好(チェン・ハオ):山の民
・少年、ツォンワ(?):学校は中2まで。通信教育で記者を目指す。

父親は配達で幼い頃からほとんど家にいなかったため息子は“父さん”と呼んだことがない。気まずさを感じほとんど会話もしない2人だが、3日間共に過ごす中で、父親は息子の成長した姿を、息子は父親の偉大さを感じ、次第に距離が縮まっていく。
その過程を淡々と描いている。
また、次のようなシーンが印象的に挿入されている。
・盲目の老婆に孫からの"手紙"を読む。
・トン族の村の結婚式に参加して、仲よくなったトン族の娘について息子が父に語る。
・息子が父をおぶって川を渡る。
・父と子が一つのベッドで隣あって寝る。

(蛇足)
学校に行けず通信教育で勉強している少年のエピソードなどを筆頭にして、辺境部の現実をオブラートに包んで美談に仕上げることに国家の影を感じるが、考えすぎだろうか?
ところで、この作品は張芸謀(チャン・イーモー)の「あの子を探して」と同じ年に作られた中国映画だが、初期の作品に見られた張芸謀の作家性が徐々に失われていったのが残念(北京オリンピックの開会式の演出を担当し、政府の旗振り役を演じることにもなった)。
masahitotenma

masahitotenma