生まれた直後のホームムービーを見て過去を振り返る三人と、自分たちが生まれる前のおやきょうだいの姿を見て母の歌を受け継いでいく二人。そこによりそう鑑賞者たち。
三面スクリーンでの上映が持つ効果は、同時に見た『M&M』(★4.0)においてよりはっきりと現出しているのではないか、という感覚もある。一つのスクリーンを眺めて安心していることはできず、その時の気分に応じて画面から画面へとなんとなく移動して眺めていく経験が、過去のすべてが保存された、記憶が浸透し合う領域のなかを遊泳する経験に近いものになっていくような。父の死⇒法事という進行をバラバラの断片へといちど解体したうえで、断片群が線的な時間から切り離されて(同一の平面状に並べられるようなイメージ)、観る者の身体的な状態と関係しながら新しい空間を作り出していくこと。