Oto

レイジング・ブルのOtoのレビュー・感想・評価

レイジング・ブル(1980年製作の映画)
3.6
ゲラゲラ笑ってみていた。スコセッシ映画の狂人/苦労人分類を見かけたけど、同じ仲間で半世紀同じような映画撮れるって最高に羨ましい。暴走のきっかけはほとんど「嫉妬」なので狂人というよりやきもち焼きに見えたけど。

ゴッドファーザー的なクールなギャング像への反抗としてスコセッシ映画があると町山さんが言っていたけど、喧騒・狂気・情けなさが振り切りすぎて笑えるという体験は他にあまりない。

コメディ的に特に好きだったのは、
・弟と喧嘩していると思ったらいつの間にか相手が妻に変わっている(誰と喧嘩してんだっけのコントとして発展させたい)
・普通の口喧嘩と殴り合いの境界が薄くてこれもいつのまにか移っている
・私怨と嫉妬でジェニロをボコボコにして妻がドン引き
・車の扉で喧嘩相手を挟む。車を使った暴力という点では『キングオブコメディ』冒頭に近い
・子供達が横にいる状態でのディープキス
・八百長で負けるのはプライドが許さずに立ったままのTKO
・金がなくてチャンピオンベルトを元妻の家でぶっ壊す。からの刑務所での反省
・吹き出た血が観客に飛び散る。「ダウンしなかったぜ」の狂気
・終盤のただのエロオヤジ。21歳って証明できるか?キスしてみろ


memo
・若い頃の奥さんはマリリンモンローっぽい、プロットはロッキーの逆を行く
・わかりやすく惚れてるのをスローで撮る。これでかっこよく映せるのがすごい
・塀越しに出会わせることで「高嶺の花」感を演出している
・距離が急速に縮まる描写:反対の椅子から膝の上への移動。2人とも変な衣装なのが良い
・ボクシングはfps変化やスローを用いた切り返しと、煽りのタイトな画が印象的
・家の中では鏡を多用。タクシードライバーを思い出す
・スライドショーで時間経過。時をまたいで敵が登場するのも『ワンスアポンアタイムインアメリカ』の成長が重なる
・妻が他の男と話しているのを不安そうに見守るのは出会いと対照的で対応
・弟の妻の名前を覚えていないというガサツさのような細かい描写好き
・チーズバーガーのような些細なものから喧嘩を作り出すのが上手い。
・トミーたちとジョークを言い合う席での緊張感良い
・そこから兄が切れると思ったら弟が爆発。『Good Fellas』を思い出すけどこれが後に効いてくる
・試合裏の通路がモノクロであるのとハットのような衣装も合わさってノワールの雰囲気を出してて良い
・序盤の弟よ俺を殴ってみろは終盤の喧嘩の伏線だったのかと気づいた
・決定上となる弟一家での爆発シーン、女性陣が仲裁して子供が引いてる構図が良い。映らないテレビも効果的
・ボクシングで特に好きなのはドリーショットからの沈黙。音の重要性を感じさせる。減量のスモークも良い。
・記者からのフラッシュと過去の試合中のフラッシュが対応して歴史を感じさせる
・エロオヤジコメディアンパートは特殊メイクと思うくらいに太って驚いた。
・波止場と聖書の引用は、自分を客観視できる老年になっても、ファイティングポーズを取りダウンしないボクサーであり続けたということみたい、勉強不足でいまいちわからんかった→ https://zilge.blogspot.com/2009/12/80.html?m=1

結局なかなか別れない二人が家族との生活を優先して幸せに暮らしましたという妙なハッピーエンドでもパプキンのような味はあったと思うけど、その後も懲りないというのもダサさが溢れ出ていてよかった。とはいえ引退後が流石に長いと感じてしまった、本質なんだけど。
(アイリッシュマン予習でスコセッシ観る期間)
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