このレビューはネタバレを含みます
「アイリッシュマン」を見たためか、キレッキレのデ・ニーロ&ジョー・ペシコンビの本作が急に見たくなった。遥か昔に初めて見た時、私はこれを「ボクシング映画」として見てしまい、がっかりした記憶がある。
いま改めて見ると、これはボクシング映画ではない。サイコパス調心理サスペンス兄弟仁義映画である(長っw)。
ボクシング映画だったら、試合のシーンがあんな戯画化されたような猥雑な撮り方にならないし、ツッコミどころ満載にならない。ボクシングシーンはあくまで、ジェイクが持つ様々な面の一つの表象に過ぎない。だからモノクロ映画なのである。
ジェイクの偏執狂的ともいえるビッキーに対する嫉妬心。サイコパスなんじゃないかと思わせられるほどの粘着質な
しつこさの方が映画の中ではメイン面で、こちらの面は見てるこっちまで気分が悪くなるくらい実に丁寧に丁寧にしつこさが描かれている。
いつ爆発してもおかしくないくらい鬱屈していくジェイクの嫉妬心だが、通常時では爆発しない。爆発させるのは試合の中である。だから試合のシーンはあんなに猥雑で乱暴なのである。特にシュガーとの最後の対戦シーンなんか、汗やら血やらが飛び散って、もはやヒッチコックの世界である(笑)。
それにしても、ジョー・ペシの重厚感。サルビーがビッキーと一緒にいるところを発見してついにボコボコにしちゃうシーンは「あ、やっぱジョーイってジェイクの弟なんだ。キレかたの間とか同じだわ」と思わせられて背筋が凍った。