木野エルゴ

落下の王国の木野エルゴのレビュー・感想・評価

落下の王国(2006年製作の映画)
3.5
語り部が物語を創作していく入れ子構造でストーリーが進んでいく。物語の登場人物は皆、語り部の世界に居る人物たちがモチーフになっている。最初それは語り部であるロイが内包するイメージで作られており、徐々に聞き手のアレクサンドリアが内包するイメージも混ざり合う。

聞き手の意見を取り入れながら進めば当然物語の流れが大きく変わるし、語り部が望めば悲劇的にも大団円にもできる。ロイの心象風景がそのまま物語の行方に反映されていくのが面白い。

リー・ペイスのくたびれた雰囲気がとても良い。今まで見た彼の出演作品は顔の表情がわからないものが多かったので、こんなに表情豊かな俳優なんだと改めて思った。笑顔も泣き顔もとても良い。

アレクサンドリア役のカティンカ・アンタルーがとても良い。子供特有の独特な間合いが意志の強さを感じさせる。何より笑顔が可愛い。

綺麗な衣装や風景が話題として目立つ作品ではあるが、病院という場所に漂う死の匂いや、子供の過酷な労働問題、スター俳優と違い決して目立たないが命懸けで作品に携わるスタントマンなど、掘り下げると興味深い要素が散りばめられている。

記憶が薄れた頃にまた見たい作品。
木野エルゴ

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