健気な少女を無理やり演じさせるには大人の階段登りすぎていた感の否めない並木路子

記憶の中で優しく微笑む川喜多小六の微妙すぎる笑顔

現代でもなくならない「名曲を映画化しようぜ！」の傾向はもし良かったらで良いんで滅びてはくれないだろうか…
あくまで個人的になんだけど、なくなってほしいなぁ…

両親を亡くして独り台湾から引き揚げてきた並木路子を、娘と喧嘩別れで寂しい金貸し柳家金語楼が拾って、自分経営のアパートに住まわせてやる。並木は果物屋で歌う台湾バナナ売り、歌が上手いのでみんなビックリ忽ちレコード・デビュー。歌の場面は工夫に富んだミュージカル演出、アパートの面々も賑やかでなかなか楽しい。で並木がスタアに駆け上がらんとしたまさにその時、貧しい靴磨きの少年が、並木の台湾時代のロマンスの記憶を引き連れて来て、彼女の心に波紋が起こる。
植民地の甘美な思い出、失った過去は忘れて戦後を明るく前向きに生きていこうじゃないかというお話。ここの最後がもっと洒落た調子で処理出来ていたら。湿っぽくもたつく。並木はずっと顔がこわばっていて演技は厳しい。ゲスト出演、岸井明のバナナ売りの歌が愉快。

ウディ・アレンにしろ渋谷実にしろ、バナナ映画は面白い。この映画も当時の銀座の様子が覗える。並木路子がリンゴの唄を歌いながら自転車で走る向こうに見えるのは中央区役所か。そしてダンスホール「フロリダ」