TaiRa

タッカーのTaiRaのレビュー・感想・評価

タッカー(1988年製作の映画)
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コッポラとルーカスの映画としてドンピシャな題材。誇大的な天才、クラシックカー、アウトサイダー。

40年代に実在した起業家・発明家のプレストン・トマス・タッカーが考案・製造した自動車を巡る話。シートベルトの採用やヘッドライトの改善など、安全性を重視した車だったが大企業によって潰された不遇の車。ジェフ・ブリッジスの無垢な少年の様な天才発明家っぷりがハマってる。良い車を作る事だけを考え、作業場の納屋で仲間と車を作り上げる高揚感。ヴィットリオ・ストラーロの美しい光演出がまた最高。夢の様な空間。一人の天才が見た夢が周りにどんどん伝染して行く映画。明るい希望に溢れた映画でありながら、政治で負ける挫折、歴史の影に葬られる切なさがある。マーティン・ランドーが去って行く場面の消灯演出が切なくて良い。コッポラとストラーロは『ワン・フロム・ザ・ハート』に続いて、セット撮影で遊んでる。2つの場所を一つのセットで表現する楽しさ。電話の場面がどれも良い。車の発表会での表と裏を同時に見せる演出も。一箇所だけトーンが違うハワード・ヒューズ登場場面も良い味。影が覆い、音も反響し夢の中のような印象。タッカーと敵対する政治家をジェフの父親ロイド・ブリッジスが演じているのも、如何にもコッポラ&ルーカス的。法廷での展開はお約束だが、光が素晴らしくて泣けてくる。
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