Jeffrey

問いかける焦土のJeffreyのレビュー・感想・評価

問いかける焦土(1992年製作の映画)
4.0
「問いかける焦土 」

〜最初に一言、傑作。ヘルツォーク的SF式ドキュメンタリーの完成。これ程に俺的な作風も中々無い。これは邪道の真実を邪道に捉えた監督の記憶と叫びである。ヘルツォークのヨハネの黙示録のイメージが描かれた湾岸戦争とフセインの起こした原油の噴き出す映像は瞼に焼きつくだろう〜



本作の原題は「闇のレッスン」と言い、なかなか興味をそそるタイトルだなと個人的に思ったこの作品は、日本で初公開された35ミリ完全版(52分)が正式な作品だが、92年9月8日にNHK教育テレビ「プライム10」で「湾岸戦争・ある映像作家の記録」の副題のもと放映された事は周知の通りだろう。本編の約半分にヘルツォークのインタビューを混ぜ合わせ、NHK側でつけたしたと思われる解説テロップを加えた44分の短縮版もある。この作品は湾岸戦争をめぐるドキュメンタリーのー種で、それを特異な部類のー種として確立した映像である。それをフィクショナルな想像力に基づいて、作者はSF映画のように完成させている。なので監督の今までの作品同様に終末的な作品として名高い1本である。


そもそも湾岸戦争は90年代を象徴する戦争であり、90年8月イラクがクウェートを暴力的に侵略して翌91年7月17日多国籍軍か反撃を開始したのは誰もが知っている。そんなリベラル利己主義の人物が作った作品とは一線を博し、ヘルツォーク監督は、この戦争自体を取り扱っていない。彼の興味を誘ったのは、戦場の現場である。ヘルツォークと言う人物はやはり自分の足で現地に向かい、自分の目で現地を視察する能力に長けている。こんな怖い荒廃とした砂漠へと好奇心を持ってゆく人物も稀である。噴き出す原油の轟音と燃え上がる炎。大気を汚す黒い煙を我々に長時間見せる。これはヨハネの黙示録と言えるのかもしれない。

‪91年に多国籍軍がイラクへの空爆を開始した。そして翌年ヘルツォークが湾岸戦争を天空から撮影した本作が生まれる…完膚無きまでに破壊し尽くされた死の風景は言わば現実からかけ離れSF映画顔負けの世界。黒煙に包まれた砂漠地帯…油田火災に吹き上がる炎は地獄を映す。‬
Jeffrey

Jeffrey