えそじま

めしのえそじまのレビュー・感想・評価

めし(1951年製作の映画)
4.3
原節子、怒りと迷いの米研ぎ。女の生きる道が結婚しか無かった時代、5年目にして早くも倦怠期に突入した夫婦の平凡な日常の中にある非凡な美しさ。

心の通わない夫、夫に色目を使う奔放な姪、向かいに住まう成金の妾。小津の描く家族ドラマにはあり得ない不穏さが漂う作品で、大胆に振り切れず反抗心を内に秘めた妻の葛藤を原節子が妙演。時代が時代なので男女格差も甚だしい顛末だが、人間の機微を映す洞察力は凄まじい。

「東京で周囲の反対を押し切って結婚してから五年目。大阪へ夫の勤め先が変わってから三年目。あの頃私を支えていた希望や夢は何処へ行ったのだろう。夫が食卓の前へ座っている。私が味噌汁の鍋を運ぶ。昨日も今日も、明日も。一年三百六十五日。同じような朝があり、同じような夜が来る。台所と茶の間と。女の生命は虚しくそこに老い朽ちていくのだろうか」
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