風来坊

新少林寺/SHAOLINの風来坊のレビュー・感想・評価

新少林寺/SHAOLIN(2011年製作の映画)
4.0
過去レビュー投稿。

時は1912年、圧政により混乱期の中国。無慈悲で傲慢な将軍・コウケツは少林寺を愚弄して弾圧する。コウケツは力で民も支配しようと画策するが、部下の裏切りで地位を奪われ家族も失ってしまう。しかしそんな彼を助けたのは少林寺の僧侶たちだった…。中国製のアクション映画。

「少林寺」といえば若き日のリー・リンツェイ(ジェット・リー)が主演して少林寺ブームを巻き起こした名作でした。
昔ながらのコミカルカンフー路線とは違い、シリアスな路線でしたがかえってそれが物語に深みを与えていました。

今作もコミカル路線ではなくシリアス重視の作品となっています。
カンフー映画にしては戦争の愚かさや、宗教色の濃い見方によっては重い内容も含んでます。
まあ、ジャッキー・チェンさんがが出てくるシーンなどでは箸休め的なコミカル演出もあります。

料理にたとえた動きで敵を倒すシーンは思わずニンマリしてしまいました。
シリアスでドラマ性を重視した重いカンフー映画で、新しさはあって良いと思いますが、なんか広く浅いような気がします。
悪人だった将軍が娘の死や慈悲によって改心していくお話ですが、もうちょっとその過程を詳しく丁寧に描いても良かったのではないでしょうか。

あれではちょっとはしょり過ぎで、それで変わるのかという疑問があります。修行シーンもざっくりとした感じで終わっていて、もっと過酷な修行を乗り越えるというのが欲しいところ。
あれでは「あれぐらいであんな傲慢だった男が改心するのかよ」って思ってしまい説得力に欠けます。

ふと気になったのは将軍の娘の名前なんですが、中国では女の子の名前でも勝男っていう男の名前っぽいの付けるんですね。
アンディ・ラウはさんは相変わらずカッコ良いですね。
傲慢な男から改心していく男を坊主にしてまで、体当たりで良い演技していました。

悪役のニコラス・ツェーさんも良い味を出していて物語を盛り上げていました。そして何と言ってもジャッキー・チェンさんの存在感はスゴイですね。
居ると居ないではかなり作品に影響したと思いますね。
武術が出来ない少林寺の僧って配役もなかなか考えてあってニクイ演出だと思います。

後半は泣かせる演出もあり涙腺を刺激されますが、いかんせんくどいなと感じます。
もっとさりげなくて良かったのに・・・さあ泣け!ここが泣き所だ!って急かされてるようでならない…。

さらにラストは神格化というか宗教色が強すぎるように思えます。
まあ…少林寺って元々はお寺さんですから、それが本来のお話なのでしょうけど…。

ラストもまあまあ読めてしまいますね。
仏の道で改心した男が、人を殺めてしまっては矛盾してしまいますから…。
ああいう終着点しかないなって薄々感じてしまいました。
ただ・・疑り深い私にはあんな極悪人があれで改心するかね?って思ってしまう!

泣かせる要素もあって新しいカンフー映画になっている良作だと思います。
善悪がはっきりして血の匂いをあまり感じさせない昔ながらのカンフー映画が好きな人には違和感を感じるかも知れませんが、これはこれとしてアリなんではないでしょうか。
でもやっぱり元祖「少林寺」が偉大だと思います。
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