けんたろう

ノートルダムのせむし男のけんたろうのレビュー・感想・評価

ノートルダムのせむし男(1923年製作の映画)
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半盲で全聾というせむしさんの、モノクロでサイレントという映画。


サイレント映画(物語のあるもの)て音楽が流れるもんだとばっかり思ってたけど、そうじゃないものもあるんだなと勉強になった。

つまりこの映画、音が一つもない。
当時の人からしたらもしかしたら普通の事だったかもしれないが、現代に観た僕からしたらこれは全聾の疑似体験だ。

そしてモノクロ映画。
人は目を使って光の色や明るさを知ることができる。
明暗はあって色彩はないのが、半盲を暗に示しているように思えてならない。
(もちろんその頃にカラーの技術がないのは分かってますよ)


民衆や貴族が生きるのを、鐘を鳴らして聖堂の上で観る。
彼らが幸せになろうが不幸になろうが、せむしには何も関係がない。

これを観ているぼくはノートルダムのせむし男じゃないか。

だがある時民衆・貴族はせむしに干渉してくる。それによって二つの感情がせむしに生まれた。
牙を向けるやつには報いを。愛でてくれるやつには幸せを。

せむしは傍観者ではなくなり、人に何かを贈る存在になっていた。
映画から受ける影響はすごいものだと日々実感するが、このせむし男がそれを改めて見せてくれた気がする。

ぼくもいつか、鐘を鳴らして人を祝える人間になりたいものだ。