半盲で全聾というせむしさんの、モノクロでサイレントという映画。
サイレント映画(物語のあるもの)て音楽が流れるもんだとばっかり思ってたけど、そうじゃないものもあるんだなと勉強になった。
つまりこの映画、音が一つもない。
当時の人からしたらもしかしたら普通の事だったかもしれないが、現代に観た僕からしたらこれは全聾の疑似体験だ。
そしてモノクロ映画。
人は目を使って光の色や明るさを知ることができる。
明暗はあって色彩はないのが、半盲を暗に示しているように思えてならない。
(もちろんその頃にカラーの技術がないのは分かってますよ)
民衆や貴族が生きるのを、鐘を鳴らして聖堂の上で観る。
彼らが幸せになろうが不幸になろうが、せむしには何も関係がない。
これを観ているぼくはノートルダムのせむし男じゃないか。
だがある時民衆・貴族はせむしに干渉してくる。それによって二つの感情がせむしに生まれた。
牙を向けるやつには報いを。愛でてくれるやつには幸せを。
せむしは傍観者ではなくなり、人に何かを贈る存在になっていた。
映画から受ける影響はすごいものだと日々実感するが、このせむし男がそれを改めて見せてくれた気がする。
ぼくもいつか、鐘を鳴らして人を祝える人間になりたいものだ。