白眉ちゃん

ある愛の風景の白眉ちゃんのレビュー・感想・評価

ある愛の風景(2004年製作の映画)
3.5

 前作『しあわせな孤独』(02)に引き続 き、アナス・トーマス・イェンセンを脚本に据える。今作も男ふたりと女ひとりを主軸として物語は進行する。

 夫を戦争で亡くし、深い悲しみの底に落とされた女は同じ悲しみを背負う義弟に心を許していく。しかし、夫と築いてきた家庭を無くすことができない。弟も義姉に魅かれつつも家族の中で愛されていた兄の場所を奪えない。
そんな不安定な緊張状態の下へ死んだと思われていた夫が帰ってくる。

 しかし、夫は家族の下へ帰ってくる為に犯した罪業に精神を蝕まれていた。愛の為の行動が彼の居場所を無くしてしまう矛盾。
キッチンを破壊し、家庭を瓦解させてしまうのが危うさ漂わせていた妻と義弟の関係ではなく、夫の精神的な限界によるところがあまりに辛い。

 ラスト、夫の心の傷を受け止め、そこから家庭を再構築しようとする妻コニー・ニールセンを照らす美しい光り。「Brødre(兄弟)」という原題に反し、妻が救済の手を差し伸べる。本編で弟との関係が厳密には未消化だが意図的か?アメリカのリメイク版『マイ・ブラザー』(09)は未見だがどう描かれているのだろうか?今作でも「しあわせな孤独」同様に言葉と本心のズレ、内面と外面の屈折がドラマを作り、予定調和にならない着地を見せる。
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