ウィリアム・ウェルマンの演出が冴える。ジャネット・ゲイナーとフレデリック・マーチが夜の路上で交わす会話。ゲイナーのクロースアップの右半分にマーチの影が濃くかかり右目は見えない。マーチの動きとともに影が逸れて右目が露わになると、ゲイナーの揃った両目に愛が溢れている。あるいは自死を決めたマーチが見る窓の外の海は、マーチを誘うかのように鮮やかな朱に染まっている。ゲイナーの隣人のダニーや、プロデューサーのアドルフ・マンジューは心優しく、そして何よりオープニングとエンディングで挫けそうになるゲイナーを前に押し出す祖母は力強い。この後のリメイク作で主人公は女優ではなく歌手に変更されエンディングは歌で盛り上げる。本作では、グローマン・チャイニーズ・シアターの入り口でゲイナーが亡き夫の足形を眼にしてから「私はノーマン・メインの妻です」とマイクに向って語りかける。このエンディングがよき。