カタパルトスープレックス

姿三四郎のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

姿三四郎(1943年製作の映画)
3.4
黒澤明監督の監督デビュー作品です。黒澤明は最初から黒澤明だった。「武道家として善く生きる」がテーマ。

最初からスタイルやテーマを持っている監督って少ないと思うんですよ。黒澤明より10年先輩の小津安二郎だって戦前と戦後では全然違う。黒澤明監督は最初から黒澤明。画家を目指した青年らしく、絵に関してははっきりと美意識を感じることができます。読書青年だったのでストーリーの芯もしっかりしている。そしてワイプの多様などエンターテイメントもきっちりと意識している。

内容は剣術を柔道に置き換えた時代劇と言ってもいい。時代設定は明治15年。講道館(劇中では修道館)が設立された年ですね。柔術から柔道への転換期。柔道の創始者である嘉納治五郎をモチーフにした矢野正五郎(大河内傳次郎)に師事する姿三四郎(藤田進)の柔道家としての成長譚です。

ちゃんとライバルがいて、ヒロインがいて、師匠がいて、師匠のライバルもいて。今でも続くエンタメ的な布陣がしっかりしている。短い尺の中でちゃんと作品として成立させている。もちろん、若さゆえの説明文での場面転換などもあるのですが、それはそれでスタイルと言えなくもない。

ちなみに本作を公開するための内務省の検閲である技能審査の審査官の一人が小津安二郎で「100点満点として『姿三四郎』は120点だ」と評価したとのこと。