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地の群れのdrgnsのネタバレレビュー・内容・結末

地の群れ(1970年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

もう鼠と鶏のオープニングから強烈だった。狭いケージの中で食い荒らされて最終的には焼却...時代的にリアルに撮影したのかな...なんとも凄まじい。そして可哀想すぎる

同じく本編も想像どおり始終暗く重い内容。複数の登場人物の話が同時進行するうえに回想がちょこちょこ入るので、立場や関係性を掴むのに苦労するも中盤になってなんとか把握....クライマックスには物語がうまく集約されて画面から目が離せなかった。

描かれている差別が被差別同士の差別なのがやるせなく、その先の攻撃の対象が集団VS個人であることにも心がえぐられる。あとは複数の女性が様々な形(望まぬ妊娠、自殺、原爆被害の隠匿、レイプ、堕胎)で被害者になるのも堪らなく辛かった。

苛立ちや絶望をより弱者にぶつける行動(レイプ犯)、娘の命より差別される側に回ることを恐れる感情(病気の娘の母親)、被差別の立場は同じでも、あの人達よりマシだという意識(徳子の母親)...と人間の闇の部分のオンパレード。
生まれや原爆被害といった自分のせいではない事で差別されるのは理不尽の極み。だけどそれを他者、しかも互いの境遇を理解できそうな相手にぶつけてしまうのは差別されてきたがゆえの行動だったのかなと思ったり。
そもそも戦争に生き残って、あんなハードな時代に生きているだけでも立派なのに、やはり人間は周囲との比較せずにはいられない生き物なのか...とフィクションだとわかっていても自問自答してしまいました。

作中の映像では、患者の母親に拒絶された医者が市民病院の廊下をひとり歩き去るところ、ノブオが壁をずり落ちるシーンが暗示的で印象に残りました。あとは徳子のまっすぐな瞳も印象的。

何にせよここまで重い作品は久しぶりで、なんだかどっと疲れてしまいました。ある種の社会問題を詰め込みすぎな感はあったけど、そのぶん色々と考えさせられる映画でした。
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