地の群れの作品情報・感想・評価

「地の群れ」に投稿された感想・評価

ヒルコ

ヒルコの感想・評価

4.0
うわぁ、スゴい映画見ちゃったなぁ・・・。私は育った土地柄上、被爆者差別や被差別部落、朝鮮人部落について、全く関係なく知りもせず育ちました。語弊を恐れない言い方で彼らをあえて一括りにするならば、彼らは自分だけでなく、その血すら憎み、しかし口に出すことも出来ず、世界を憎み、誰かのせいにしたくも出来ず、心の中で叫びながら生きていたのだろうかと、ルーツや差別というもの、そして差別者同士の差別などをハッキリ見せつけられた気がします。それでいて、映画としてもとても面白い出来でまた素晴らしいと思いました。そして原作があの「全身小説家」の人って!
めちゃ傑作ではないですか。
熊井啓監督は、こういう作品をちゃんと残してたんですね。
床ずれ

床ずれの感想・評価

3.5
これこそまさにJapan’s secret shameというべきか、戦後日本が残したとてつもなく大きな問題が、忘れ去られたまま長崎に横たわっているような衝撃を受けた。
原爆、被曝者差別、被差別部落、朝鮮人差別、強姦、佐世保エンタープライズ闘争、集団リンチ、あらゆる重い問題が濃密に詰まった2時間。
熊井啓監督作品。
まず、生きたニワトリに多数のネズミが襲い掛かり、生きたまま殺してネズミたちが食べる冒頭シーンからして気味悪い。

佐世保を舞台にした物語であるが、根本は長崎の原爆問題。
そして、同和部落と被爆者部落(海塔新田(かいとうしんでん)と呼ばれる部落)の対立、ケロイドのある被爆者による部落女性の強姦、殺人などを描いている。
また、原爆投下日に長崎に居た女性などは被爆者差別を受けまいと医者に嘘をつくが、娘は原爆病で死にかけたりする。

こうした差別の応酬は観ていて考えさせられる。
所謂、娯楽映画的なプロットではなく、深部に薄暗い、ぼんやりとした苦痛や、歪に、繋がることのない個人たちと、当時の「左翼思想」に向かった人間たちの閉塞感が生んだ作品。

戦後世代の掲げる「自由」というものは、戦後の民主主義という煌びやかな理想に対して、戦前に押し付けられてきた幻想の反動として解放ではなく、捻れていった弊害があるのだと思う。

現代を生きる僕らとはまた違う社会との自分とか、他人との距離感とか、そういう意味で心と身体のバランスが今以上に保てない。

世界を知るための情報であったり、幻想であったりが強くあるからこそ、この時代には、この時代の絶望的な断絶があるのだなぁと思った。

こんな時代でも、コミュニケーションという意味では現代の方が多少なりとも分かり合えてると思ったり。
熊井監督らしい作品だが演出は勅使河原宏チック。マグマは怒りを、渦巻く水は問題が解決しない現状へのメタファーか?何よりも驚くのはネズミと鶏のタイトルバック。ワイルドバンチより早くやってるとは!タブーに切り込む事でソフト化が困難とされるのは抗議に屈するからで地に足つけて信念をしっかり持っていれば例え抗議が来てもディベートして納得させる事が出来るのではなかろうか?ややっこしい問題だから、ややっこしい問題が起きる、だから何がダメかよく分からないけど扱わないのが無難という自主規制がタブーを作り上げているのではなかろうか?そういった問題に立ち向かいソフト化に成功した好例だと思う。
香港

香港の感想・評価

3.7
疎外される側の映画。そしてその疎外されている側の枠組みの中でも、更に疎外と軋轢と差別がもう一つの枠組みを作っているという事実を提示してくる。その枠組みが集約された投石のシーンの音と構図に鳥肌が立つ。
notitle

notitleの感想・評価

4.1
後ろめたい過去を持つ一人の医者、被差別部落、被爆者が集まる集落。すれ違っていた各々が、ある出来事を切っ掛けに、混じり合い始める。近代化進む街の中、向かい合うことを避けられ、取り残された現実。目を背けても変わらない。人間の弱さ。衝撃。
ある意味、本当の昭和の作品。

長崎の原爆を題材に、戦後間もない佐世保を舞台に

「部落」の存在と、部落間の違い

ある部落の女性が、強姦された事により、話が展開していきますが、加害者が、別の部落の若者で。

ラストは、他の作品では、まず考えられないような絶望感、やるせなさが残ります。

強姦された女性の母親が、ある部落で闇から飛んでくる無数の石に絶命するシーンは、並のホラーより恐怖と背筋の凍りつく感じがしました。




題材の割には映画の雰囲気は淡々としていて、直接的な暴力シーンは少ない。
強姦・殺人シーンも台詞による説明、あるいは溝鼠や鶏のメタファー映像で表現されているものが殆どだ。
同監督の前作『黒部の太陽』と同様、淡々と出来事を重ね、ある一点でエネルギーを爆発させる構成のようだ。
その一点とは、娘が強姦された事を抗議しようと、北林谷栄演じる母親が海搭新田へ殴り込んだ後のシーンだ。

それまで、「少々口が悪いが娘思いの母親」的に描かれていた人物から、凄まじく差別的な罵倒が連発される。
(この時の北林谷栄の悪意と怨念に満ち溢れた表情が本当に凄い)
すると、北林谷栄が外から大量の投石を受ける。石を投げる人間達の顔は暗闇に紛れて一切見えない。
強姦された娘の友達である少年は、そのリンチを複雑そうな表情で見つめていたが、瀕死の北林谷栄が絞り出した差別的な罵倒を聞いた途端、足元の石を拾い上げ止めを刺す。
控え目だった演出がここへきて一気に沸騰し、映画が猛烈な悪意と攻撃性に満ちていく。

視点があっちこっち行き過ぎて映画としては観辛いのだが、それぞれの集団を高密度に描いているとも言える。
とりあえず「見ておくべき」作品であると思った。
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