地の群れの作品情報・感想・評価

「地の群れ」に投稿された感想・評価

所謂、娯楽映画的なプロットではなく、深部に薄暗い、ぼんやりとした苦痛や、歪に、繋がることのない個人たちと、当時の「左翼思想」に向かった人間たちの閉塞感が生んだ作品。

戦後世代の掲げる「自由」というものは、戦後の民主主義という煌びやかな理想に対して、戦前に押し付けられてきた幻想の反動として解放ではなく、捻れていった弊害があるのだと思う。

現代を生きる僕らとはまた違う社会との自分とか、他人との距離感とか、そういう意味で心と身体のバランスが今以上に保てない。

世界を知るための情報であったり、幻想であったりが強くあるからこそ、この時代には、この時代の絶望的な断絶があるのだなぁと思った。

こんな時代でも、コミュニケーションという意味では現代の方が多少なりとも分かり合えてると思ったり。
熊井監督らしい作品だが演出は勅使河原宏チック。マグマは怒りを、渦巻く水は問題が解決しない現状へのメタファーか?何よりも驚くのはネズミと鶏のタイトルバック。ワイルドバンチより早くやってるとは!タブーに切り込む事でソフト化が困難とされるのは抗議に屈するからで地に足つけて信念をしっかり持っていれば例え抗議が来てもディベートして納得させる事が出来るのではなかろうか?ややっこしい問題だから、ややっこしい問題が起きる、だから何がダメかよく分からないけど扱わないのが無難という自主規制がタブーを作り上げているのではなかろうか?そういった問題に立ち向かいソフト化に成功した好例だと思う。
香港

香港の感想・評価

3.7
疎外される側の映画。そしてその疎外されている側の枠組みの中でも、更に疎外と軋轢と差別がもう一つの枠組みを作っているという事実を提示してくる。その枠組みが集約された投石のシーンの音と構図に鳥肌が立つ。
notitle

notitleの感想・評価

4.1
後ろめたい過去を持つ一人の医者、被差別部落、被爆者が集まる集落。すれ違っていた各々が、ある出来事を切っ掛けに、混じり合い始める。近代化進む街の中、向かい合うことを避けられ、取り残された現実。目を背けても変わらない。人間の弱さ。衝撃。
ある意味、本当の昭和の作品。

長崎の原爆を題材に、戦後間もない佐世保を舞台に

「部落」の存在と、部落間の違い

ある部落の女性が、強姦された事により、話が展開していきますが、加害者が、別の部落の若者で。

ラストは、他の作品では、まず考えられないような絶望感、やるせなさが残ります。

強姦された女性の母親が、ある部落で闇から飛んでくる無数の石に絶命するシーンは、並のホラーより恐怖と背筋の凍りつく感じがしました。




題材の割には映画の雰囲気は淡々としていて、直接的な暴力シーンは少ない。
強姦・殺人シーンも台詞による説明、あるいは溝鼠や鶏のメタファー映像で表現されているものが殆どだ。
同監督の前作『黒部の太陽』と同様、淡々と出来事を重ね、ある一点でエネルギーを爆発させる構成のようだ。
その一点とは、娘が強姦された事を抗議しようと、北林谷栄演じる母親が海搭新田へ殴り込んだ後のシーンだ。

それまで、「少々口が悪いが娘思いの母親」的に描かれていた人物から、凄まじく差別的な罵倒が連発される。
(この時の北林谷栄の悪意と怨念に満ち溢れた表情が本当に凄い)
すると、北林谷栄が外から大量の投石を受ける。石を投げる人間達の顔は暗闇に紛れて一切見えない。
強姦された娘の友達である少年は、そのリンチを複雑そうな表情で見つめていたが、瀕死の北林谷栄が絞り出した差別的な罵倒を聞いた途端、足元の石を拾い上げ止めを刺す。
控え目だった演出がここへきて一気に沸騰し、映画が猛烈な悪意と攻撃性に満ちていく。

視点があっちこっち行き過ぎて映画としては観辛いのだが、それぞれの集団を高密度に描いているとも言える。
とりあえず「見ておくべき」作品であると思った。
ILC

ILCの感想・評価

4.5
原作未読。
観る前の予想に反して全体的に結構複雑な構成だった

内容的にはアメリカンヒストリーXを100倍濃くした感じ

この世界の片隅にとセットで上映して欲しいけど現実的には無理そうだ
昔ほど露骨では無いけど、現在も少なからずこう言った暗部は存在していると思うと、見て考えるのに損なし。
青二歳

青二歳の感想・評価

3.7

このレビューはネタバレを含みます

もうネズミが鶏を食い散らかすオープニングで心くじける。重層する差別の力学。差別は少数者対多数者ではないのだ。同和出身者と被爆者がお互いに差別し合う佐世保の物語。登場人物の過去や社会背景の中に、朝鮮人・クリスチャン・日本共産党まで絡んでくる。山村工作隊員って何だソレこわい…と諸々…これがDVD化OKなら他の未ソフト化のあれやこれやもDVD化容易いだろうよと全力のツッコミを入れてしまう。本気でDVDにならんだろうと諦めていた。
民藝に加え、日活退社組のえるふプロダクションなので日活の役者たちを呼び集め、地味ながらも実力派を揃えた作品。信夫青年は麦人の若い頃。医師の鈴木瑞穂の父(この人なんていう俳優さん?!)、ケロイドまみれの末期の演技が素晴らしい。演技がかっていないドキュメンタリーのようなトーンで本当に恐怖した。そしてハイライトはやはり宇野重吉と北林谷栄。彼らの台詞も絶句だが、なによりその演技に絶句。

タグの海塔新田はこの劇中で被爆者が住む架空の集落の名前です。劇中では被爆者の部落といいますが「変な風な部落とは思っていないですよ」という光子の台詞。この頃すでに部落という言葉が集落を指す一般名詞ではなくなって、同和を指す名詞に変化しているのだろうか。(東北の親族は町村単位を日常的に部落といいます…)
mura

muraの感想・評価

4.5
DVDで鑑賞。驚いた。かつてはこういう映画が作られていたんだと。で、これからはこういう映画は作られないんだろうなと。

若者たちが「ALWAYS 三丁目の夕日」を見て昔の日本が羨ましいって言ってるのはどうなんだと…ある人が言ってたのを思い出した。この映画を見れば、どう考えても昔の日本がいいとは思えない。

被差別部落の女が被爆者部落の男に強姦される。それを責めたてた女の母は被爆者部落の住民たちに殺される。

1発の爆弾で悲惨な目にあった被爆者たちが、何百もの石つぶてで1人の女を殺す。皮肉でしかない。

そして最後に象徴的なシーンが。被爆者部落の住民と被差別部落の住民の両方から追われた被爆者部落の男が逃げ込もうとするのは米軍基地。悲しさ極まりない。
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