スギノイチ

地の群れのスギノイチのレビュー・感想・評価

地の群れ(1970年製作の映画)
4.0
題材の割には映画の雰囲気は淡々としていて、直接的な暴力シーンは少ない。
強姦・殺人シーンも台詞による説明、あるいは溝鼠や鶏のメタファー映像で表現されているものが殆どだ。
同監督の前作『黒部の太陽』と同様、淡々と出来事を重ね、ある一点でエネルギーを爆発させる構成のようだ。
その一点とは、娘が強姦された事を抗議しようと、北林谷栄演じる母親が海搭新田へ殴り込んだ後のシーンだ。

それまで、「少々口が悪いが娘思いの母親」的に描かれていた人物から、凄まじく差別的な罵倒が連発される(この時の北林谷栄の悪意と怨念に満ち溢れた表情が本当に凄い)。
すると、北林谷栄が外から大量の投石を受ける。石を投げる人間達の顔は暗闇に紛れて一切見えない。
強姦された娘の友達である少年は、そのリンチを複雑そうな表情で見つめていたが、瀕死の北林谷栄が絞り出した差別的な罵倒を聞いた途端、足元の石を拾い上げ止めを刺す。
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