三樹夫

八つ墓村の三樹夫のレビュー・感想・評価

八つ墓村(1977年製作の映画)
3.9
『水曜日のダウンタウン』の「名探偵津田第2話〜呪いの手毬唄と招かれざる男〜」で、タイトルから分かる通り『悪魔の手毬唄』のパロディをやっていたが、「たたりじゃ~」の台詞も入れていて『八つ墓村』要素もあり結構面白かった。伊集院とみなみかわは映画好きだから、これ『悪魔の手毬唄』やんって気付いてそう。混乱した津田が頭かきむしりだして振る舞いが金田一耕助になり、さらになぜか『インセプション』になってたのは笑った。お化け屋敷ドッキリは蛇足感あったが、『八つ墓村』のオカルト要素をあそこで律義にパロディしていたのかもと深読みができるが、基本的には『悪魔の手毬唄』で、標的と違う人が殺されるのとか『悪魔の手毬唄』やってんな~と思った。『悪魔の手毬唄』はこの人であってくれるなというのが犯人だったので、絶対理沙が犯人だろと思ったら違った。意識しているかは分からないが『悪魔の手毬唄』の犯人の性別逆転みたいな終わりにはなっていた。そこから派生して、久しぶりに『八つ墓村』を観たくなったので再視聴。

岡山の山村で連続殺人が起きるという、「たたりじゃ~」の台詞が有名な今作。しかも「たたりじゃ~」が全くその通りだったというオカルト映画になっている。監督は野村芳太郎、脚本橋本忍大先生、撮影川又昂、音楽芥川也寸志と『砂の器』のメンバーが再集結して作られた松竹版金田一耕助がこの映画だ。
この映画はミステリーをやっていない。そもそもミステリーは映画でやりにくいというのがある。ミステリーの見せ場である推理シーンは会話中心にならざるを得ず、画が死ぬからだ。映画では観客はスクリーンを集中して観る。そこに映し出されるのが画が死に会話中心にならざるを得ない推理シーンが見せ場となると、映画としてかなりキツい。そのため映画においては何らかの方法でミステリーを避けることがあり、『名探偵コナン』シリーズなんかも劇場版ではミステリーよりかは軸足はアクションの方にある。
この映画が選択したのはオカルト映画として作るということだ。ショーケンが八つ墓村に来てからホラー要素をぶち込みまくっており、オカルト映画の下地を作っている。アメリカの田舎に行ったら怖いよホラーに出てくるレッドネックみたいな牛引いたツバ吐くおっさん(このイメージは『脱出』や『悪魔のいけにえ』などのアメリカの田舎に行ったら怖いよ映画から持ってきていると思う)、お化けみたいな白塗りの「たたりじゃ~」ババア、お化けみたいな白塗りの市原悦子と山口仁奈子の双子ババア、金のために落ち武者殺す民度低い村人など、邦画でオカルトをやるにあたって考えうる限りのホラー要素をてんこ盛りにしている。また白塗りのお化けメイクをしている役者がとても多い。隙あれば白塗りメイクをしている。
推理シーンは会話ばかりで画が死ぬというのを作り手も承知しているので、金田一の推理と鬼婆に追いかけられるのがカットバックになって画が死ぬことを防ごうとしている。挙句、金田一が物的証拠なんか無いと言うのもミステリーに主軸が置かれていないことが分かる。

映画始まっていきなり思うのが、ショーケンの芝居なんやねんという自然体演技でド肝を抜いてくる。周りが作り込んだ演技してる中すんごいマイペースな芝居してて、そこに渥美清ぶち込んで訳分からないことになってくる。しかし悦がガチガチに化け物演技してて、さすが悦だぜと思う。怪談話でも始める勢いみたいな声色作ってて、頑張ってホラー雰囲気を作ろうとしている。後、綿引勝彦が相変わらず美声。
渥美清金田一については横溝先生はまんざらでもなかったと言われている。小林信彦との対談で、「結局、探偵というものは狂言回しでしょう。主人公は別にいるんですワ。犯人か被害者かどちらか、それが二枚目になるでしょう。二枚目を二人出されちゃ困る。だから金田一、やっぱり汚れ役にしてほしい、松竹(おたく)ならやっぱり渥美清だろうって、ぼく、そう言ったことがあるんですけどね」と言っており、横溝先生が考える金田一耕助は、石坂浩二や古谷一行よりも、二枚目ではない渥美清の方が近い。

映画始まってホラー要素入れまくりのハッタリかましまくってる前半はいいが、思いっきり中だるみする。重要なこと知ってるけど今は言えないが連発するし。早く言えよジジイとなる。
この映画の白眉は山崎努の32人殺しで、これは都井睦雄の津山三十人殺しが元になっている。都井睦雄については『丑三つの村』がその心理に迫ろうとしている。この映画では32人殺しを引き起こした多治見要蔵の心理には迫らず、ただ恐ろしい奴として存在している。やってること極悪過ぎ。

『砂の器』は父と子の話だったが、同じ座組で今度は母と子の話をしている。主人公はどう考えてもマザコンで、主人公にとっての森美也子は母親の代替としての姉のような存在だ。こんなんただの富野由悠季主人公やん。鍾乳洞をグルグル回っていたのは、これ『砂の器』で似たようなの観たことあるとなる。
なんにせよ落ち武者の祟りは怖い。というか昔も現代も八つ墓村の村人の民度低いな。
三樹夫

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