空

八つ墓村の空のレビュー・感想・評価

八つ墓村(1977年製作の映画)
3.5
野村芳太郎以下『砂の器』のスタッフが結集し、渥美清を金田一耕助役に据えて製作されたヒット作。石坂浩二版に慣れてる身からすると今作の金田一はあまりにも普通のおっちゃんすぎる気がするけど、横溝先生に言わせればこれが一番正解に近いらしい。殺人を全く防げてないのはいつものことながら、今回はただ郷土史を紐解くだけで推理らしい推理はほぼしないという大胆さが、もはや一周回って清々しい。

作風に関してはミステリーというより怪奇スリラー的な趣きがあって、事件の真相もわりとオカルトじみたもの。おまけに小川真由美演じる不惑前後の未亡人が冒頭からハンパない色香を漂わせてることも手伝って、全体的にB級エログロ映画みたいな雰囲気を纏ってる。一方で芥川也寸志の美しい劇伴は一級品だし、ロケ撮影にもかなりの時間と金がかかってることが見て取れるというアンバランスっぷり。まあその甲斐もあって見どころの多い映画にはなってると思うけど、やっぱり個人的には石坂浩二版のシリーズのほうが好きかな。
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