三樹夫

ゴジラ対ヘドラの三樹夫のレビュー・感想・評価

ゴジラ対ヘドラ(1971年製作の映画)
4.0
公害のメタファーというか公害そのものの怪獣ヘドラ。人間が有害物質を海に垂れ流し生まれると、2023年になってもまたこの映画が存在感を持つに至っている。劇中アニメで工場が緑を食い尽くしどんどん拡大していく様が描かれるが、つまりそもそも工場自体がヘドラであるということだ。スモッグで校庭の学生が倒れた実際の事件も取り込み、核がゴジラを生み出したように公害がヘドラを生み出すと、核に匹敵する人類の業として公害が描かれる。

初っ端からサイケデリックでアバンギャルドで、奇形の魚介類や灰色にただれた顔面などもの凄く怖い。海に滞留するヘドロが繰り返され気持ち悪さすら覚える。さすがに裸に直にペインティングは出来なかったか、裸へのボディペインティングを模したボディスーツや、演奏される音楽がギンギンでカッコいいゴーゴー喫茶など、サイケデリックな若者文化が盛り込まれ、音楽の力で対抗しようとするも人が集まらず失敗し、ヘドラに松明を投げる様は学生運動を想起させるものと、ヒッピー文化や学生運動世代の若者の敗北も取り入れられている。かといって体制側が大活躍かというとそうでもなく、自衛隊は「ヒューズがとびました」とポンコツだし、そもそもヘドラを生み出したのは大資本や体制の責任が大きいと、どこを向いても人間どうしようもねぇな感。最後はゴジラのお前ら本当にいい加減にしろよという表情を叩きつけ終わる。

片目潰れたり腕が溶けたりゴジラを追い詰めまくったヘドラ。戦い方もお互いに目つぶしの応酬など凄惨極まるバトルとなっていた。ヘドラの目はどう考えても女性器で、目から光線を発射するのであれば普通なら目の中央からの発射になると思うが、なぜか少し上にズレてクリトリスの位置から発射していると、ヘドラの目は女性器のイメージで固められている。
最後のゴジラ対ヘドラのバトルで完全にテンポは鈍化し、ひたすら映画の尺を稼ぐだけのシーンが続く。おそらく予算的に完全に力尽きたのだろう。アバンギャルドの演出もどこへやら。最後まで前半の勢いで突っ走れていればゴジラシリーズナンバー1の大傑作だった。
伊福部昭のお馴染みの音楽は流れないが、この映画は音楽がガンギマリで良く印象に残る。水銀、コバルト、カドミウム、鉛、硫酸、オキシダン、シアン、マンガン、バナジウム、クロム、カリウム、ストロンチュウム。
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