半兵衛

ゴジラ対ヘドラの半兵衛のレビュー・感想・評価

ゴジラ対ヘドラ(1971年製作の映画)
3.5
ゴジラシリーズの中でもアングラ、アナーキーな感覚に満ち溢れた狂った映画。また今見ると70年代がどういう世相だったかわかる文化史的側面のある映画になってると思う。「公害」という言葉が実感しづらくなっている今の世の中に比べると、この映画の頃は教科書で書かれているとおり深刻な問題だったんだということも。
近年特撮やアニメでは「エヴァンゲリオン」以降舞台裏に描かれた世界観を考察することが多くなっているが、この「ゴジラ対へドラ」も見れば見るほどその深い世界観に気づかされる。
まず一つ挙げるとするならば、この映画の物語は万葉集で山部赤人が歌った「田子の浦ゆ うち出でてみれば 真白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける」にかかっていることで、当時ヘドロによる公害問題で騒動になっていた田子の浦が冒頭に出て来て、そして歌のとおり富士山でゴジラとへドラが決着をつける。また製作当時の静岡を撮すことで、歌で歌われた美しき富士山やその周辺が公害によって破壊されているという皮肉にもなっている。そう思うとラストに北斎の富士山の絵が出てきたのも、もう戻らない富士山やその周囲の美しい姿に哀悼の意を捧げたのかも知れない。
実はまだまだ隠れているメッセージがあるはずだが、まだつかめていないのでそれは今後の課題にしておく。
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