世界で一番ハネケ映画が好きだ。
なにより、カットの美しさ。三重奏のシーン、ドアフレームの居間、エレベータ、何より扉を開けた先のスケートリンクのシーンなんかは彼しか撮れないなと思う。
強い束縛(本作では母親)の下に長年座られ続けた人間の愛の形はこんなにも異形なものなのかとゾッとさせられる。最初見ていて、ピアニスト故の愛の形なのかとおもっていたが、何てことない子供の抱く性的好奇心の異形と化した化け物でしかない。とても醜い。それにも関わらず、引き寄せられるのはなぜだろう。それはこの化け物を人は皆何かしらの形で抱いているからであろう。誰でも人のカーセックスを見ながら放尿しうる。
醜すぎるが、身近すぎる。
こんな醜いものをこの上なく美しく撮っているハネケ。
世界で一番ハネケ映画が好きだ。