あんじょーら

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチのあんじょーらのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

ヘドウィグという人物が、全米をめぐるトミーという歌手と同時に同じ地でライブをしてめぐる旅を続けています、トミーを相手に訴訟を起こして。その歌手の曲は私が作ったものだと訴えて。もちろんトミーは有名ミュージシャンですから、その会場は大きく、ヘドヴィグのライブは場末で(というかステージすらないような場所で)行われていますが、しかしその曲は素晴らしいのです。そしてヘドヴィグのパフォーマンスもまた素晴らしいのです。そしてヘドヴィグの過去を振り返りながら、今の恋人であるイツハクと、バンドメンバーと旅を続けています。果たして旅の終わりに何が待ち受けているのか...


様々な場面で流れる曲が、ヘドウィグのパフォーマンスが、素晴らしいのです。パワー溢れる曲で、身体の内側から溢れてくるものを感じさせます。特に「The Origin Of Love」、「Wig In A Box」、「Midnight Radio」は素晴らしい曲でした。


途中、受け手に向けて流される曲というしかけも、ミュージカル仕立ての構成も、なによりヘドウィグを演じたジョン・キャメロン・ミッチェルのパフォーマンスが素晴らしいのです。


音楽が好きな方に、ミュージカルが好きな方に、オススメ致します。








アテンションプリーズ!

ネタバレがあります、出来れば見終わった方だけ見てください。






























実は、最初に見た段階では曲の素晴らしさに惹かれたものの、いまひとつヘドウィグが掴めなかったのです、何故このようになってしまったのか?という根本の問題が。ヘドウィグにとってのトミーとイツハクとのそれぞれの関係性が、また性転換手術を受けいれることが。もちろんそれしか東ドイツを離れる手段が無かったのであろうけれど、です。またそのキッカケを作ったアメリカ軍人ルーサーが何処から出てきたのか?等瑣末な疑問に囚われてしまったままだったので。しかし、見終わった後から、あの曲をもっと聴きたい、と思うようになりました。見終わった直後よりも、時間を経た後により強く聴きたいという感情が起こるということはあまり経験が無いことなのでびっくりしました。とくに「The Origin Of Love」は心の奥を打ち響かせる曲でした。


最後の最後、あれだけの化粧を落とし、衣装を脱ぎ捨て、ついに身のままの、素の状態をさらけ出すヘドウィグの痛々しいまでの行為が、素晴らしかったです。今までのギャップを考えると身体を覆うものを脱ぎ捨てただけでない、心からの自分を、自分で受け入れた(と私は解釈しました)ヘドウィグは、だからこそ裸でハンセルに戻っていったのではないか?と感じました。「ありのままを受け入れて」とトミーに言った言葉は、自分に言った言葉だったからこそ、ヘドウィグからハンセルに戻ったのではないか?と。イツハクからも(イツハクの望む道はきっとかなり前から分かっていたと思いますし)、トミーからも離れ、歩き出したハンセルの曲を、聴いてみたかったです。