櫻イミト

ポーリンの危難の櫻イミトのレビュー・感想・評価

ポーリンの危難(1914年製作の映画)
3.5
1910年代“連続活劇の女王”パール・ホワイト(当時25歳)の出世作。毎週1話40分ほどが上映され全20話。日本版VHSは第1話を含む5話を収録した傑作選。

冒険小説家を志す少女ポーリン(パール・ホワイト)は義父マーヴィンの死により、莫大な遺産を相続する事になるが、後見人となったケーナーは遺産を目当てにポーリンの命をつけ狙い、冒険と称して彼女を様々な危険に陥れようとする。ポーリンは婚約者ハリーと共に度重なる危機を乗り越えて行く。。。

「空と火をくぐりぬけて」
遺産相続、気球で崖に飛ばされ家が燃やされる
「西の果ての女神」
インディアンにさらわれ転がる巨石から脱出
「海賊の宝」
偽海賊登場、船に時限爆弾が仕掛けられる
「死の分岐点」
 自動車レースに出場、カーチェイスの罠
「アンテナ」
 地下牢に閉じ込められ水攻めで溺れる危難

淀川長治さん少年期のアイドル、パール・ホワイトを初めて観た。明るくハツラツとしたコメディエンヌな雰囲気。サーカス出身で危険なシーンも自らこなすのも魅力。映画黎明期、短編コメディ一色の時代に、女性ヒロインのロマンとスリルを描いた本作はさぞかし観客を楽しませたことだろう。今回観た傑作選だけでも、現在に通ずるピンチ場面の殆どのパターンが既に導入されている。

先行した人気活劇「ファントマ」(1913~)に比べると、画角がタイトでテレビ的な印象。アイドル性を打ち出すための方針だろうか。パール・ホワイトは以降も「拳骨」(1914)「鉄の爪」(1916)と連続活劇に主演しヒットを飛ばしていく。

エンターテイメント映画の基本作であり、今から見ると教科書的でずば抜けて面白いわけではないが、映画史を知る上では必見の作品と言える。

※パール・ホワイト映画の制作はフランス・パテ社のアメリカ支社。「ファントマ」「吸血ギャング団」を制作したフランス・ゴーモン社とライバル関係にあった。

※本作の演出アイディアは、当時人気絶頂だった警官隊のドタバタ喜劇“キートン・コップス”(1912~)の諸作から影響を受けている。プロデューサーでスラップスティック・コメディの創始者マック・セネットは、1914年にここからチャップリンをデビューさせる。
櫻イミト

櫻イミト