シャチ状球体

1408号室のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

1408号室(2007年製作の映画)
3.8
泊まると必ず死ぬ部屋。そう聞くと泊まりたくなるのが人の常(たぶん)だが、本作の主人公もそんな好奇心に負けた人間の一人だ。その好奇心は自らのトラウマを掘り返し……。

主人公が部屋に入るまでの20分程度はホテルの支配人役のサミュエル・L・ジャクソンがベタな警告をしたりとあえてチープな演出にしているんだろうけど、これが後から遅効性の毒のように効いてくる。

1408号室で起こる出来事は説明不可能なものばかりだ。世界から自分一人が孤立してしまい、全てが自分に敵意を向けてくる。
要するに、この物語は後悔のメタファー。絶対にやり直すことのできない過去は、決して過去にはならない。現在を徐々に過去が侵食していき、見る世界は徐々に現実と乖離していく。後悔に身を委ねれば海の底へ沈んでいくし、抗うには相当な労力が必要となる。
そんな概念が目に見える形で現れたら……というホラーで、一風変わったエンディングも魅力的だし、こういった映画でよくある、世界を強制的に閉じるような終わり方ではなく、逆に広げるという"他者不在の崩壊"とも言える感覚が新鮮。
シャチ状球体

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