ジョナサン・デミと言えば『羊たちの沈黙』だが、そのインパクトが強過ぎて、他の作品が思い出せない。でも、『フィラデルフィア』も『レイチェルの結婚』も僕はいい作品だと思う。
でも、やっぱり『羊たちの沈黙』が代表作になってしまう。いま見てもインパクトは強いし、作品としての完成度が高い。出演者一人一人の素晴らしさは言うまでもなく、顔を揃えた時のバランスが絶妙なのだ。
ジョディ・フォスターは素晴らしいけれど、対峙するのがアンソニー・ホプキンスじゃなかったら、ここまで輝かなかった気がするし、逆にアンソニー・ホプキンスを「名優」にまで押し上げたのも、この作品のジョディ・フォスターがいたからに違いない。
そりゃ、こんな作品を作っちゃったら、一発屋と言われても仕方がない。この作品を越えなければと、次作を作るってどんだけすごいプレッシャーなんだろうと思う。
ということで、久しぶりに見たけれど、この作品を深いものにしているのは、ジョディ・フォスターを男たちのいやらしい視線の中に放り出す演出だ。どこにいても、この映画のジョディ・フォスターは怯えている。その視線が嗜虐心を煽り、少しずつ、彼女を強がらせ、その行動が彼女自身を追い込んでいく。その辺りがとても見事で素晴らしい。
ま、本当に不気味で怖い映画だけどね。この作品を初めて見た時、絶対アメリカなんかには行かないぞ!と思ったもんだ。いまは、日本でもこんな事件は起こりそうだけど。