転生Moljiana

夜と霧の転生Moljianaのレビュー・感想・評価

夜と霧(1955年製作の映画)
4.1
 大学の図書館にDVDが置いてあったので視聴。強制収容所・アウシュビッツでの生活を自ら体験したジャン・ケロール氏の著書『夜と霧の詩篇』をベースとした記録映画。内容としては主に1933年頃から始まったナチスによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)を当時の記録映像と10年後のアウシュビッツの様子からモンタージュ的に映し出した物。

 『夜と霧』『SHOAH』。ホロコーストを描いたドキュメンタリー映画として有名な二作、後者はちょっと長尺(10時間)なので「短尺(31分)だし、とりあえず観ておくか」位の精神で観ちゃいましたが、予想を遥かに超える映像の数々には本当に驚かされました。何がとんでもないって記録映像に映されるユダヤ人の無残な最期の数々が兎に角痛ましい。ガス室送りの後に屍となったユダヤ人の死に顔、女囚から剥ぎ取った毛髪の山、ブルドーザーで死体を穴に落としていく様子などとても正気とは思えない所業の数々にもう愕然。こんなの実録じゃない限り許されないでしょう……。これが「モンド映画」だったらどんなに良かった事を……。

 一方、10年後のアウシュビッツの映像はとても静かで退廃的。広大な建物は無人となり、ナチスは過去になる。しかし、犠牲となった900万人の魂は未だに彷徨い続ける。ラストシークエンスのナレーションからは「この出来事を絶対忘れてはいけない。」という原作者と監督の強いメッセージを感じました。

因みに映画評論家のアド・ギルー氏は「この地上に生きる者は全て、この映画を見ねばならない。そうすれば、全てはもう少し良くなるだろう。」と述べたそうです。人類史に残るであろう蛮行であり悲劇を描ききった映画として是非観るべき映画でした。
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