プレコップ

ブロードキャスト・ニュースのプレコップのレビュー・感想・評価

5.0
1980年代ラブロマンスコメディに見せかけた、めちゃくちゃ辛辣な社会風刺。だけどやっぱり爽やか。

まず、主演のウィリアム・ハートがとても良い。頭は悪いがウィットに富んでいて、物腰がやわらかく誰からも好かれる性格のトムを軽薄であざとく演じる配分の絶妙さ。

脚本はインテリジェンスかつ軽妙。2時間超えの上映時間も苦にならない。
後半、アルバート・ブルックス演じるアーロンはジェーンに、そして観客に重要な問題提起をする。これは今では凡庸なマスコミ批判に利用されそうな提起ではあるが、普遍的で骨がある。ここで発信される、目に映るささいなものごとだけで誰もが簡単に感情を揺さぶられる危うさへの警鐘は、テレビニュース全盛の時代の映画でありながら、陳腐化するどころかむしろネットニュース時代により顕著になっているからこそより刺さる。資本主義国におけるキャリア社会での個人理念のあり方についてがテーマの根底にあるのも新鮮だった。

監督のジェームズLブルックスはこの後、かの「ザ・シンプソンズ」を手がける。ホリー・ハンター演じるジェーンは少しリサ・シンプソンを感じるキャラクターでもあるし、冒頭のテープを持っての激走や日本のドミノ倒し特番のくだりのナンセンスさもシンプソンズ感があった。ちなみに、アンカーマンの信用できなさは後のシンプソンズのエピソード「祝!400話」などでも描かれている。

DVDに収録される途切れ途切れのバブリーなニュアンスの吹き替えはアーロン役の屋良有作さんがとても素晴らしく、実際のアナウンサーのようなどっしりとした声が印象的。また、ジャックニコルソン(!)の声を当てる朝戸欽也さんも良かった。

立川談志も満点つけたコメディ傑作。
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