『ブロードキャストニュース』。
本当に素晴らしい作品です。ニュース制作現場における個性の異なる三人の生きざまを描いているのだか、ディレクター役のホリー・ハンターがムチャクチャいい。
確かな教養に裏付けられた、ブレない正義感、瞬時に状況を把握し適切な采配を施すことのできるリーダーシップ。
この映画を観たらキャリアウーマンという言葉がもはや死語でしかないことを思い知らされる。
この映画での彼女は、常に目的に向かって最短距離を頭の中ではじきだし、一直線に突っ走る。
ただ…
それが、あまりに自然体に過ぎて、逆にある種の悲愴感を微かだが感じさせるのだ。
これまで男が築き上げて来た社会。
男にとって都合の良いシステムは消そうとしても目に見えない空気として確実に存在し続けてる。
そんな空気の中でニュートラルではない、過剰なエモーションを「自然」に維持しつつ走ることを止めない彼女は、海中で泳ぐことが止められない(止めることは死を意味する)、マグロに似ている。
…以前、カウンセリングの先生が「女性が現状の社会に社会に進出する事は、時代の段階として自然なことだ。
ただ、生理学的にはかなり無理がある。
今の外社会は女性の心理や生理の機微を、これっぽっちも反映してはいないからだ。
これから、心身に歪みを訴え、支障をきたしてしまう女性が増えると思う。」
…と仰っていたのを思い出す。
…この映画に於いても、その辺が実にさりげなく、描かれている。
物語の流れを、まるで無視してあるショットが数回に渡って、まるでサブリミナルのように挿入される。
…一人ぽつねんと自分の部屋に佇むホリー・ハンターが、いきなり泣き出す。前後の脈絡はない。
しかも、それは空泣きで涙は一滴も出ていない。
ひとしきりの嗚咽の後、何事もなかったのように無表情顔に戻る…
これは、心身に溜まった「歪み」を吐き出すための彼女の知恵なのだろう。
この役は、メグ・ライアンやメラニー・グリフィスにはできないと思う。
彼女たちなら、どう演じても女性・性を軸に据えてしまうと思う。ホリー・ハンターが凄いのはコケテッシュなコメディエンヌの立ち位置を保ちつつ、女性・性に依存しない新しいキャリアウーマン像を打ち立てた点にある。
まぁ、そんな細かいことを抜きにしてもこの映画は、抜群に良いです。
この映画、他に語るべきことが満載だが、俺が書くとくどくなるし職場に着いちゃったので、この辺にしときます[i:199]