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ウディ・アレンの重罪と軽罪のmasayaanのレビュー・感想・評価

4.2
「シリアス・コメディ」なんてサブ・ジャンルがあるなら、これがそれだ。ウディ・アレンが本気のドラマ映画を撮っていること自体がまず面白く、内容的にも『愛と死』(75)の練り直しと言うか、それこそドストエフスキー的な(刑法上の/道徳上の/宗教上の)罪と罰の世界を真面目に、実存主義的無神論的に、シニカルに描いている。

しかもそれを、「あの女、高潔な俺をもてあそんで軽薄なチャラ男を選びやがった!」という男の失恋と、「浮気相手の女がメンヘラだったので黙らすために殺しちゃった!」という別の男の殺人、という通俗的な題材を通して描くことで、すごいものを見たような、そうでもなかったような不思議な後味を残すポップな仕上がりに。(女性が見るとまた違った映画なのかな?)

ウディ・アレンは、『アニー・ホール』が『ビフォア』三部作や『トスカーナの贋作』に重要な青写真を提供していることばかり話題にされがちですが、本作について言えば、スパイク・ジョーンズが『her/世界でひとつの彼女』を撮るときに参考にした映画だということに加えて、「ダメンズにビシッと客観的なダメ出しをする女の子」という配役含めて、なぜか日本で大人気の『(500)日のサマー』の最大のパクリ元でもあるでしょう。

批評誌『カイエ・デュ・シネマ』の年間ベスト、第8位の作品。モラルもヒューマニズムもクソ喰らえと言わんばかりの実存主義的無神論的不条理劇(笑)。
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