歴とした趣味があるというだけでは映画にも映画の「作家」にもなり得ないだろうが、小津には趣味に過ぎないものを演出という銃に実弾として装填して標的をきっちり射抜いて見せる力がある。だから趣味に過ぎない筈のものがそのまま映画になり、また自身、映画の「作家」たり得てしまう(のではないか)。
特に前半の東京での学生生活パートで、場面の展開の後追いとしてではない、むしろそれに先立つイメージとして唐突に表層に表出する(ように見えてしまう)字幕の文言。
「ロマンス」を謳いつつも、そのじつは同年の『和製喧嘩友達』にも通じるバディもの。
列車の床には結構ゴミ。
町並みを吹き抜ける風。「山は雪だぜ」