コブラ改めキットラトゥーラ

クローバーフィールド/HAKAISHAのコブラ改めキットラトゥーラのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます




POV……ポイントオブビュー。

恰かも素人が撮っている設定の疑似ドキュメンタリー映画で頻繁に使われている手法らしい。
この画期的な映像表現方法が世に知られるようになってから金が無くて困っていた数多くの前途有望な若き映画制作者達がどれだけPOVに救われたことか。しかしやる気とアイデア次第で誰でも安く作れるせいで右を向いても左を向いてもPOVだらけの熾烈なPOV戦国時代になってしまったのもまた事実。その内戦国時代をPOVで撮った正気じゃない映画も登場するんじゃないでしょうか。
で、金のない全ての映画制作者達の駆け込み寺的節約術であるハズのPOVに逆に巨額の大金を投入してPOV超大作にしてしまった凄い発想の映画がこれ。

合衆国最大の大都市ニューヨークに突然正体不明の巨大怪獣が出現!現場に居合わせたちょっとやそっとの衝撃では壊れない目を疑う装甲力とバッテリーの持続力を誇るトンデモカメラを装備した素人カメラマンが自由の女神の頭が目の前に飛んで来ても謎の小型生物に襲われても乗ってたヘリが墜落しても火事場の馬鹿力で何度も立ち上がりストーリーが進むにつれ信じられない早さで撮影テクを次々覚えてスキルアップしては何が起きても絶妙なアングルで撮り続け事の一部始終を何も知らない我々に伝えようとしたとある勇敢なスーパーアマチュアカメラマンの愛と勇気と冒険の物語。

……と、思い込んでいた公開当時、僕はまだまだ甘ったれのペーペーでクローバーフィールド…“クロフィー”の事を何も理解していなかった!素人カメラマン超パネェ映画としか思っていなかった。
あれからもう何年も経ち、恋とか仕事とか色々それなりに経験したようなしてないような薄っぺらい人生をジグザグに歩んで今では「アデル、ブルーは熱い色」をレンタルしたけどあまりの長さに途中で見るの諦めた上、返却期限を2日オーバーランするほどスマートでシネフィルな大人に成長し今日数年ぶりにクロフィーと再会してもう一度クロフィーとよく向き合って話し合いをしてようやく解ったのが、怪獣とかPOVとか劇中の謎とかカメラマンの絶妙なカメラワーク感とか実はそんなんはどうでもよくて要は一人のリア充がドン底に落ちるだけの映画だったんですよねクロフィー。

副社長に昇進し海外出張前夜に大勢のリア友からさよならサプライズパーチーを開いてもらえるようないけ好かないイケ男が数分後怪獣出現により何故か怪獣のいる方向にばっかり逃げようとするからせっかくイケてた出世人生が倒壊したビルと並行して崩壊していく様子をPOVでドキュメンタリー調に見せる事により劇中の逃げ惑う登場人物たちを自分を差し置いてガンガン出世していく職場の憎き同期や後輩たちに見立てて見てるこっちが”HAkAISHA”になったような気分にさせる体感型リベンジムービーだったんだと今日やっと気付きました。(笑)