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キリング・フィールドのinunohitoのレビュー・感想・評価

キリング・フィールド(1984年製作の映画)
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初めてカンボジアに行くことを決めたときに観た。マイナスにもプラスにも評価なんてできない。

1回目にカンボジアに行ったときはアンコールワットに残る銃弾の痕や首のない仏像、手足のない物売りさんたち、必死にお金を稼ごうとしてる子どもたち、信管を抜かれた山盛りの地雷を見た。

2回目にカンボジアに行ったときはお金を稼がないと家に帰れないと言う子ども、手足のない物乞いをするひとたち、血の痕が残る収容所の床、たくさんの子どものあたまを打ちつけて殺した木を見た。

当然見たのはそれだけじゃない。幼稚園の先生の家庭訪問についていったわたしにケラケラ笑いながらちょっかいをかけて遊ぶ子ども、カメラを向けると嬉しそうに走ってともだちを呼んで戻ってくる子ども、やわらかくてやさしい大人たち。みんな人懐っこくておおらか。

それだけにかなしさとか怒りとかでいっぱいになるときがある。どうしてそんなひどいことができる。人間を人間と思わぬ仕打ちが許せない。カンボジアの内戦にはベトナム戦争も絡む。ベトナム戦争にはアメリカとソ連も、それだけじゃなくてたくさんの国が絡む。兵器を売って利益を得た生き物が居る。戦争には利権が絡む。間接的にひとを殺して利益を得ている生き物が居る。ひとを殺して文化を殺して、これまでを積み重ねてきた既に亡くなったひとさえ軽んじていく生き物。子どもに平気で銃を持たせる生き物。今も根深くひとを苦しめ続けている。許せない。

この映画は恐怖を感じるシーンが多くあるけれど、それだけじゃ終われない。片付けられない。歴史を学ぶための足掛かりとして観てほしいとは思う。それが全部とは思わないでほしい、って前提は押さえた上で。歴史も人間も多面的なものだからむずかしいとは思うけど。日本史や世界史のオベンキョウが大学受験のための呪文だと思ってるひと、社会科教師を含めてたくさん居ると思うけど、知らないということはそれだけで十分罪だと思う。でも考えれば考えるほどできる範囲の狭さに苦しむ。どうやってたのしくこの世で生きていくのかわからなくなる。結局目をつぶって頭からそれを追いやって笑うしかない。無理すぎ。
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