めしいらず

恐怖の報酬のめしいらずのレビュー・感想・評価

恐怖の報酬(1953年製作の映画)
4.7
シンプルな設定で研ぎ澄まされた緊迫の人間ドラマを炙り出す映画史上屈指の心理スリラー。序盤に慌てず騒がずゆっくり一人ひとりを描いたことが中盤以降のサスペンスに絶妙に効いてくる手練れの語り口。ニトログリセリン運搬の極限の緊張。追突の危機。腐食した吊り橋。行く手を塞ぐ岩石を爆破。恐怖に晒され続け立ち位置が入れ替わる人間関係。若者らは意気地なく項垂れる老人を憚りなく嘲笑う。爆音より爆風が先に届くあの巻きタバコのシーンの見せ方。オイル溜まり脱出。そして極限下で見せた残酷な判断。露わになるその本性。もう卑小を隠せず惨めに逃げ回る老人をさらに打擲してしまう若者のおぞましさ。どの緊迫のシーンよりもこの真っ黒い人間ドラマのコクと厚みこそが堪らない。そして待ち受けるカタストロフィ。やはりフランス映画だ。初鑑賞から30年。この映画以上に手に汗握った経験は未だない。
再…鑑賞。2020年の最後に観た映画

2020年に観た映画のべ349作品(再鑑賞を含む)

2020年ベスト30(再鑑賞を除く)
1「明日、君がいない」 2「ヘレディタリー/継承」
3「スモーク」 4「わたしは、ダニエル・ブレイク」
5「スリー・ビルボード」 6「ウインド・リバー」
7「パラサイト半地下の家族」 8「ビッグ・リボウスキ」」
9「彼岸花」 10「十二人の怒れる男」
11「ワンダー君は太陽」 12「ロックス・イン・マイ・ポケッツ」
13「ベルヴィル・ランデブー」 14「罪と罰」
15「秋刀魚の味」 16「きっと、うまくいく」
17「殺人の追憶」 18「ホーリー・マウンテン」
19「狼たちの午後」 20「フレンチアルプスで起きたこと」
21「もうひとりの息子」 22「少年と自転車」
23「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
24「バニー・レークは行方不明」 25「デス・プルーフ」
26「白いリボン」 27「きみはいい子」 28「パラダイスの夕暮れ」
29「疑惑の影」30「新感染ファイナル・エクルプレス」
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