がちゃん

キッドのがちゃんのレビュー・感想・評価

キッド(1921年製作の映画)
4.1
動画配信サービス「U-NEXT」で往年の喜劇俳優、チャールズ・チャップリンの作品が一挙配信されているのを見つけて、懐かしい友人を見つけた感覚で観に行きました。

1921年作の本作。
笑って泣けるという作劇を(おそらく)初めて作り上げた元祖ハートウォーミング・コメディ。
オープニングは、「笑いと たぶん涙の物語」という字幕で始まる。

芸術家と別れた婦人が罪の意識に苛まれながらも、幼い我が子を車に捨てる。

しかし、冷静になった婦人は誤った行動を悔いて子供を取り戻しに戻るが、その車は悪党に盗まれてどこかに行ってしまう。

その赤ん坊を、風来坊風の格好をした貧しいチャップリンが偶然拾ってしまう。

居合わせた警官などの目もあり、その子を引き取らざるを得なくなったチャップリンは、その子にジョンと名付け育てることになる。

5年後。
ジョンは成長し、チャップリンの詐欺まがいの仕事の相棒を務めるまでになるのだが、ある日、近所の悪ガキとの喧嘩が原因で熱を出してしまう。

そして医者にかかったことから、ジョンは捨て子であったことが判明し、行政は無理やりジョンを孤児院に入れようとするのだが・・・

チャップリンの懸命な子育てに拍手喝采しながら、なんとかジョンを孤児院に入れさせないために奮闘するチャップリンの姿に次第に心が熱くなってくる。

このドタバタ劇がこうも感動的になったのは、ジョンを演じた天才子役、ジャッキー・クーガンの存在が大きい。

とにかく愛らしくて、演技も達者。
チャップリンの仕事の相棒としての容量の良さといったら。
そして、無理やりチャップリンと引き離されるときの泣きの演技にはやられてしまった。
それだけではなく、悪ガキとの喧嘩のシーンは見事な動きを見せるところが非凡。

子役の泣きの演技は、時にあざとく感じてしまって素直に感動できないことも多いのだが、ジャッキー・クーガンには一切そんな嫌味なところが感じられない。

途方に暮れたチャップリンが夢を見る場面は、少々唐突に感じてしまいましたが、それでも、夢の園に悪魔たちがやってきたり空を飛んだりと楽しい。

チャップリンとジョンの関係は、そのまま1979年の『クレイマー・クレイマー』でのダスティン・ホフマンとジャスティン・ヘンリーの関係に引き継がれているよう。
二人がフレンチトーストを協力して作る場面は、そのまま本作でパンケーキを作る場面へのオマージュではないかと思うほど。

そして、すべてを赦してしまうラストシーン。
子供を捨ててしまった母親に対して、観客は少しモヤモヤした感情を抱いていたはずなのに、それさえも。

とても優しい気持ちになれる。

初見の時よりも、はるかに大きな感動を得たのは、それなりに自分も人生の機微を感じることができるようになったからであろう。
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