トモヒロ

カルメン故郷に帰るのトモヒロのネタバレレビュー・内容・結末

カルメン故郷に帰る(1951年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

戦後間もない日本。浅間山の麓、北軽井沢。
家出をして東京でダンサーになった「おきん」から、実家の牧場に手紙が届く。久しぶりで帰省してくるという。

芸名「リリィ・カルメン」として東京で有名になったおきんが故郷に錦を飾るといって皆喜んだが、父親は渋い顔をした。
頭の足りない娘が「芸術」をやって成功したなどと言っているが、どうも信じられないという。


帰ってきたカルメンは、目が眩むほどきらびやかな衣装に身を包み、高慢な女になっていた。
村の者たちは物珍しさに好奇の目を向けるが、父親はカルメンを避ける。


村には芸術家と呼べる人間が一人いた。戦争で失明した作曲家・田口である。幼い頃カルメンが想いを寄せた男だ。
妻が馬車での運送をして生計を立てているが、貧しく慎ましい暮らしで、借金のためにオルガンを売り払ってしまっていた。

ある日、学校の運動会の開会式にカルメンも出席し、村人たちは喜んだ。
校長先生たっての願いで、田口が新曲を披露する。故郷への想いを歌ったその曲に、カルメンも校長たちも心を打たれる。本当の芸術に感動したのだ。



カルメンがある日外で踊っていたのが村人たちの間で評判になり、興行主の丸十(まるじゅう)がカルメンの舞踏公演を企画する。
校長先生は公演に猛反対するが、父親の「俺は見ないが、日本の真ん中でホンモノならこの田舎でもホンモノなはずだ。踊りたいなら踊らせてやってください」という。

実際、カルメンの踊りは小学校の授業でやっている円舞とさほど変わりがなく、観客はただカルメンの裸にしか興味がないのだった。

それでも、興行収入は村にとっていいほうに使われていくことになる。
「帰ってよかったわ」とカルメンは満足して東京へ戻ってゆく。




カラー作品だからこそ意味があるカルメンのきらびやかさ。

初見だが、こんなに明るいコメディとは思わなかった。ギャグ満載!
なかでも笠智衆の「一本背負い」は絶品!

高峰秀子がタイトル・ロールのカルメンを演じているが、群像劇。実は劇中いちばん美しく写っているのは、雄大な浅間山だったり、田口夫妻(佐野周二・井川邦子)だったりする。

「目あきよりいろんなものが見える」
「『恥ずかしい』ってことは人間だけが知ってることだ。尊いことだ」
等、名言多数。
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