SANUKIAQUA

7月4日に生まれてのSANUKIAQUAのレビュー・感想・評価

7月4日に生まれて(1989年製作の映画)
4.4
ずっと観る機会が合わなかった作品をこの度鑑賞。
幸せな少年期を50年代で過ごした田舎町の
ごく普通の健康な青年がベトナム戦争に出征して
人生が変わってしまう物語。

舞台は70年代ベトナム戦争なのだけれど
その後の湾岸戦争から進行形のウクライナ侵攻まで
あらゆる世界の戦場とその兵士たちに共通する
話なのではないかと思います。
もっと拡大解釈すれば、戦争に行くわけでもなく
国の政策や、経済状況、宗教的な支配などにより
人生が変わっていく一市民の話なのかも知れない。

無垢な若者の純粋な思いと戦場の現実の差が激しくて
ベトナムでの凄惨な光景は目を背けたくなるものです。
戦場で命をかけて戦ったのに負傷して帰国すれば
正反対の主張が世間を支配しているのは
実際に戦場に行き、帰還した兵士たちからすれば
やりきれないでしょう。
思わずアフガニスタンから撤退した米兵のことを思いました。
帰還兵の帰国後の苦しみはさまざまな映画やニュースでも
報じられている。ランボーもそうだし、フォレストガンプの
ダン中尉はまさにこの主人公とそっくりです。

戦争は終結宣言がされますが、関わった兵士やその家族の
戦争が終わることなどないのだと感じます。
映画の最後、主人公は光の中へと進みますが、
見ていて僕はとてもドキドキしました。
カメラのフラッシュで彼はまた傷ついているように見えたし、
あの群衆の中、彼は殺されるのではないか、
あの光は栄光の光ではないのでないかと。

プラトーンやトップガンを観客が見ていることを
利用して皮肉っぽく描いているところがさすがだと思いました。
戦争に英雄はいない、いるとすればそれは作り出されるものだと。
SANUKIAQUA

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