YokoGoto

悪い男のYokoGotoのレビュー・感想・評価

悪い男(2001年製作の映画)
3.6
ーシリーズ 恐る恐るキム・ギドクを見よう 2ー

『魚と寝る女』で、多少のボディブローから立ち直れないまま、『悪い男』を鑑賞。引きずってしまう後味の悪さは、どの作品も同じ。

本作は大分前に鑑賞済み。初見の時も思ったが、キム・ギドク作品の中では、比較的分かりやすく、観やすい作品。

突然、街で見かけた女子大生に一目惚れしたヤクザが、女子大生にむげにあしらわらた事をキッカケに、女子大生を罠にはめて、風俗嬢にしてしまう。その後は、自分の監視下で、女子大生を歪んだ愛で見守っていくという、理屈で考えたら、『何なの、そのシチュエーション』という、むちゃくちゃなストーリー。

もう、このあらすじだけで、ドンヨリ。

女子大生を罠にはめてから風俗嬢になるまでの一連の流れは、多少の強引さはあるので、少し無理スジな部分は大目にみて進めるのがコツ。そこから先は、女子大生の悲劇が始まるのだが、側で見守る無口なヤクザは、絶妙なキャラクターで、なかなか感慨深い。

Tシャツの襟元がヨレヨレしてる感じとか、言葉を話さない無口なヤクザで、めっちゃ身体は鍛えてる感じとか、ヤクザ役のキャラは、かなりはっきりしていて、とても良いなと思う。

なるほど、こういうタイプの役者を使うのか、と感心する。

このキャラクターだけで、なんの説明もなくとも、彼の過去や生い立ち、孤独なども透けてみえるようだ。

それに反して、無垢な女子大生役の彼女も、めちゃくちゃハマっていて、純粋さの中に、所々に擦れた感じをみせるキャラ設定も、なかなかの演出。

ある意味、ヤクザの彼は、言い訳できない程の悪い男なのだが、女子大生側が、ヤクザな世界に適応してしまう感じが、とても自然に描かれていて、そこにリアリティを感じてしまう。

ヤクザの彼の歪んだ愛は、全く共感できないし、女子大生側だって、冷静な判断が働けば、他の手段はあったろうに、と思うのだが、人間というのは、その中にいると、理性では片付けられない程の荒波に流されてしまう事もあるのだと、多少の恐ろしさを感じてしまう。

本作もまた、キム・ギドクが描く、歪んだ愛なのだが、女子大生が傷ついていく所に、一定の不快感は感じるものの、全く理解できないという事はないので、安心して鑑賞できると思う。

愛に正しさもなければ、種類もないのかもしれない。決して理解はできないけれど、これも愛のカタチだと理解しょうとすればするほど、人間の本質は奥深いものがあると思うのである。

悪い男は、本当に悪い男なのか?
いや、どっから見ても悪い男なのだが、全否定できない人間味を、後味として残す作品。

Netflixで見られます。
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